タイトル | 模擬環境下における麹菌・パン酵母の生残性 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2002~2003 |
研究担当者 |
島 純 楠本憲一 柏木 豊 鈴木チセ |
発行年度 | 2003 |
要約 | 土壌、廃水、生ゴミ処理等を模した模擬的環境を確立した。これらの環境中に麹菌胞子 及びパン酵母を接種し、経時的に検出を行った結果、パン酵母は供試環境中で生残性が低 いが、麹菌は土壌中及び廃水モデルにおいて長期にわたり残存することが明らかになった。 |
背景・ねらい | 乳酸菌、パン酵母、麹菌、紊豆菌などの食品微生物においては、既に実用可能な組換え微生物が開発さ れているが、実用化のための安全性評価指針が策定されていない。食品あるいは有用物質生産等において 組換え微生物を有効に活用するためには、開放系で利用する際の環境安全性について評価手法を確立する 必要がある。ところが、これまでは実用株の環境中における動態等でさえほとんど知見が見られなかった。 本課題では、食品微生物の組換え体の環境安全性評価の前段階として、麹菌およびパン酵母実用株の環境 中における高感度な識別技術および土壌、廃水、生ゴミ処理等のモデル系を確立し、模擬的環境中におけ るこれらの菌の生残性を評価することを目的とする。 |
成果の内容・特徴 | 1.模擬的環境としては、プラスチックボトルに入れた黒土あるいは川砂(25 ̊ C)を土壌モデル、水道水 を培養基質としたバッチ培養(5L、室温)を廃水のモデルとした。また生ゴミ処理のモデルとしては、 家庭用の生ゴミ処理機に封じ込め対策および処理過程の測定装置を施し(図1)、モデル生ゴミ(野 菜、果物、米飯、肉、魚を混合)の微生物分解過程のモニタリングが可能となった。 2.麹菌においてはピリチアミン耐性、パン酵母においてはシクロヘキシミド耐性のマーカーを付与した。 麹菌は胞子懸濁液を、酵母では生細胞を、共に滅菌水で洗浄後、模擬環境中に接種した。サンプルを 経時的に採取し、土壌及び生ゴミサンプルは滅菌水で抽出後、選択培地を用いて培養・検出を行った。 3.土壌モデル中および廃水モデルにおける供試実用酵母の生菌数は、接種後日数とともに同様に漸減し、 モデル土壌では 40 日、モデル廃水では 25 日程度で計数限界以下にまで低下した(図2、図3)。 4.実用麹菌のモデル土壌中における生残性は高く、60 日以上に渡りほぼ同様の生菌数が検出された(図 4)。廃水モデルにおいては約 60 日に渡り検出された。モデル生ゴミ中では、28 日程度で検出限界 以下に低下した(図5)。麹菌は使用環境によっては長期に渡り残存する可能性が考えられた。 |
カテゴリ | モニタリング |