タイトル |
購入飼料依存型酪農における稲発酵粗飼料の利用促進条件 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
2004~2008 |
研究担当者 |
千田雅之
大石亘
岡崎泰裕
田口光弘
畑原昌明(埼玉農総研)
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発行年度 |
2006 |
要約 |
購入飼料依存型酪農における現行技術の稲発酵粗飼料の購入上限価格は、畜産農家への助成が廃止された場合、流通乾草より8円/乾物kg低い水準である。多堆肥栽培(堆肥還元4t)及び多給(日給与量乾物8kg)技術により、購入上限価格は約99円/乾物kgに、購入量は約3倍に増加する。
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キーワード |
酪農、飼料イネ、稲発酵粗飼料、多堆肥栽培、多給技術
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背景・ねらい |
飼料イネ生産の定着には、耕種経営側の評価とともに、ユーザーである畜産経営における稲発酵粗飼料(イネWCS)の評価を解明し、技術開発のポイントやコスト低減目標、助成水準を明らかにする必要がある。また、自給飼料基盤の限られている畜産経営では、家畜排せつ物の処理が極めて重要な課題であり、イネWCSは飼料確保のみならず、堆肥還元圃確保の契機としても評価されている。 そこで、購入飼料依存型酪農経営モデルを構築し、イネWCS利用による経営改善効果、イネWCSに対する購入上限価格、イネWCS利用促進の技術条件を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 営農モデルは、労働力2人、飼料基盤240a、経産牛30頭程度の酪農単一経営を前提とし、土地利用のプロセスとして、夏作:食用米、ミレット、コーンサイレージ、冬作:イタリアンを設け、それぞれ堆肥還元量の上限を設ける。飼料イネ圃場への堆肥還元は酪農経営が運搬散布する。イネWCSはF型専用機による収穫調製品を1個2,600円で耕種経営から購入する。イネWCSの利益係数に収穫圃場からの運搬費用を、また、労働係数にストックヤードから牛舎までの運搬・給餌作業を含める。イネWCSは原物1kgあたり42円(乾物1kgあたり47円)の購入乾草に替えて給与する。最適化の指標は所得最大化とする。
- 現行技術(飼料イネ圃場への堆肥還元2t以下、1日あたり給与量乾物4kg以下)、及び堆肥の外部処理が可能な場合、イネWCSは4,469円/個の価格まで購入するが、助成がすべて削減されると現行価格2,600円/個を下回る2,415円/個(34円/乾物kg、約27千円/10a)が購入上限価格となる。これは購入乾草より8円/乾物kg低い水準である(表1)。
- 堆肥処理が自家圃場または飼料イネ圃場に限定された場合、イネWCSがなければ、酪農経営の飼養規模は著しく制約され所得も著しく低くなる(図1)。イネWCSの購入上限価格を高めるためには、多堆肥栽培技術が有効であり、堆肥還元可能量が4tになると購入上限価格は約99円/乾物kgに向上する(図2)。また、酪農経営の改善(飼養頭数及び所得増加)やイネWCSの利用促進には、飼料イネ圃場への堆肥還元に加えて、イネWCSの多給技術の開発が必要であり、給与可能量が乾物4kgから8kgに増えると購入量は約3倍に増加する(図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 耕種経営と畜産経営間でイネWCSの円滑な取引を行うための情報として活用できる。
- イネWCSの利用促進、評価向上に必要な技術開発に活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
経営管理
経営モデル
栽培技術
ストック
低コスト
肉牛
乳牛
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