タイトル |
北海道における被覆緩効性肥料の窒素溶出特性と露地・施設野菜栽培への利用 |
担当機関 |
北海道立花 |
研究期間 |
1997~1997 |
研究担当者 |
奥村正敏
元木征治
三木直倫
長谷川進
美濃健一
林哲央
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発行年度 |
1997 |
要約 |
被覆緩効性肥料の80%窒素溶出日数は土壌、水分条件に影響されず、40日タイプでは春~初夏の利用で約70日、夏40日未満~50日であり、70日タイプでは初夏約90日である。全量基肥作条施用により、スイ-トコ-ン、ねぎなどの分施が省略でき増収効果も高く、減肥も可能である。ただし低温、降水不足による土壌乾燥時には肥効が低下し、窒素が残存する。
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背景・ねらい |
道内における被覆緩効性肥料の窒素溶出特性を明らかにし、各種露地・施設野菜への肥効 特性を把握する。このことにより、北海道の露地・施設野菜栽培における利用指針の基礎資 料を得る。
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成果の内容・特徴 |
- 露地野菜畑土壌における被覆緩効性肥料の窒素溶出ならびに肥効特性
被覆緩効性肥料(被覆燐硝安加里)の春から初夏における窒素溶出の地域間差、年次間差は 小さく、土壌水分条件にも影響されず、実用上、土壌の種類を考慮する必要はない。 窒素溶出は施用時の地温が高いほど施用初期の溶出(立ち上がり)が大きく、80%溶出日数は 短縮される。40日タイプの場合、春~初夏からの利用で70日程度、7月中旬からの夏露地で40 日未満~50日程度である(表1)。70日タイプでは初夏からの利用で約90日である。 被覆緩効性肥料の全量基肥施用による肥効発現は、全層施用よりも作条施用で高く、この施 肥法に該当するスイ-トコ-ン、ねぎなどの増収効果が高い。この結果、現行施肥体系の分 施省略が可能となり、当該作物の減肥の可能性も高い(表2)。 溶出した窒素の肥効は地温(気温)と土壌水分の影響を受ける。すなわち夏作でより速効的 であり、乾燥年のとくに春~初夏作では肥効が低下し、土壌水分条件によっては作条施用で 窒素不足を招くおそれがある(表2)。
- 施設野菜畑土壌における被覆緩効性肥料の肥効特性
トマト・ほうれんそうとも全量基肥施用はほぼ慣行区と同等の収量である(表2)。トマトで 2割、ほうれんそうで3割減肥した処理ではやや減収する程度で、慣行から速効性肥料を同量 減肥した処理よりもやや高く、品質も慣行区と大差ない。
- 被覆緩効性肥料の施用が環境負荷におよぼす影響
被覆緩効性肥料を施用した場合の窒素利用率は高まらない場合もある。溶出タイプが作物の 窒素吸収パタ-ンにほぼ合致している場合は問題ないが、肥効が遅れる場合には窒素が残存 する。
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成果の活用面・留意点 |
- 本試験は被覆燐硝安加里、被覆燐硝安肥料を用いた。直線または放物線の溶出パタ-ンを
持つ他の被覆緩効性肥料にも適用可能である。施設はハウス無加温普通栽培の作型である。
- 被覆緩効性肥料は、低温、乾燥時には肥効が低下し、作条施用では土壌水分条件によって
は窒素不足を招くおそれがある。
- 被覆緩効性肥料は対象作物の窒素吸収パタ-ンにあった溶出タイプの選択が重要である。
- 速効性とブレンドして作条基肥施用する場合は、濃度障害を回避するよう配分割合に注意
する。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
肥料
乾燥
施肥
トマト
ねぎ
ほうれんそう
野菜栽培
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