タイトル |
アーバスキュラー菌根菌がかかわる前作効果の後作物による違い |
担当機関 |
北海道農業試験場 |
研究期間 |
1997~2001 |
研究担当者 |
笠原賢明
建部雅子
山縣真人
唐澤敏彦
豊田政一
有原丈二
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発行年度 |
2000 |
要約 |
リン酸吸収を菌根に依存しないアーバスキュラー菌根菌非宿主作物の生育は、前作物の影響を受けにくい。一方、宿主作物の生育・収量は宿主作物跡地で優る。しかし、前年に宿主を栽培することによる増収効果には作物間差があり、豆類等で大きく、小麦、ばれいしょで小さい。
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背景・ねらい |
アーバスキュラー菌根菌(菌根菌)の宿主作物跡地では、とうもろこしの収量が高い。しかし、他の作物に対する前作の影響は明らかではない。そこで、キャベツ、だいず、ばれいしょを後作物として栽培し、前作物の影響を比較する。さらに、1992-2000年の試験結果を用いて、作物の収量に及ぼす前作物の影響(前作効果)を後作物の種類ごとに比較する。
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成果の内容・特徴 |
- ばれいしょ、だいず(菌根菌の宿主)の生育(播種50日後の地上部乾物重)は、キャベツ、てんさい(非宿主)後より、あずき、とうもろこし(宿主)後で優る。一方、キャベツ(非宿主)の生育は前作物の種類に影響されない(図1)。
- ばれいしょ、だいずの生育差は、前作物の種類による菌根菌感染率の違いに起因する(図1)。一方、リン酸吸収を菌根に依存しないキャベツでは、宿主作物跡地においても菌根菌の感染はほとんど認められず、これが前作物の影響を受けない原因と考える。
- 生育と同様にキャベツの収量は前作物の影響を受けないが、だいずの収量は宿主作物後で高い。しかし、ばれいしょの場合、生育初期には前作効果が認められるが、収量には差がみられない(図2)。このことから、非宿主作物には前作物の影響は認められず、宿主作物の中では、ばれいしょへの影響が小さい。
- 1992-2000年の試験結果を用いて各種後作物の収量に対する前作の影響を総括すると、だいこん、キャベツ、そば、てんさいのような非宿主作物の収量には、宿主作物後と非宿主作物後で差がみられない。一方、宿主作物の中でも、いんげん、あずき、だいずのような豆類やひまわりでは宿主作物後での増収効果が強く認められ、小麦、ばれいしょでは、前年の宿主作物栽培による増収効果が小さい(表1)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本試験圃場の有効態リン酸は12~25mg/100gである。リン酸施肥量は、92~94年が20kg/10a、97年が25kg/10a、2000年が各作物の施肥標準量、それ以外の年次は10kg/10aである。
- 菌根菌を考慮に入れた栽培体系を策定する際の判断材料となる。
- リン酸肥沃度が高い場合など、土壌条件によっては、宿主作物にも菌根菌がかかわる前作効果が認められないことがある。
- 本成績は、病害・線虫害等がない場合の結果である。前作物の選定にあたっては、後作物の病害・線虫害等を増やさない菌根菌の宿主を選ぶことが重要である。
平成12年度北海道農業試験会議における課題名および区分 課題名:輪作におけるアーバスキュラー菌根菌の動態と畑作物への前作効果(指導参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
肥料
あずき
キャベツ
小麦
栽培体系
施肥
そば
だいこん
大豆
てんさい
とうもろこし
播種
ばれいしょ
ひまわり
輪作
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