環境酸性化の指標となる蘚苔類・地衣類に関する研究

タイトル 環境酸性化の指標となる蘚苔類・地衣類に関する研究
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 垰田 宏
井鷺 裕司
発行年度 1995
背景・ねらい 樹皮上に生育する蘚苔類や地衣類(着生植物)は大気の汚染に著しく敏感であり、樹木が枯死するより早く消失することから、大気汚染の指標植物として利用されてきた。日本では、1972年以降、各地で汚染地図が作成されている。その後、大気汚染対策が成果をあげるにつれ、樹皮上にコケ類が復活してきたという報告が見られるようになった。ここでは、過去に調査された東京都(1969~1971年調査)、宇都宮市東部(1975年調査)の着生植生を同一の方法で再調査し、大気汚染濃度の変化と比較した。同時に人工酸性雨による生育障害の種類間の違いと野外での分布特性との関係、酸性物質に対する耐性の指標となるスーパーオキドデスミュターゼ(SOD)活性の測定を行い、酸性雨との関係を検討した。
成果の内容・特徴 東京都での調査は1969~1971年に行われたので、二酸化硫黄(亜硫酸ガス)濃度が最も高かった時代の植物影響を反映していると考えられる。都心部においては明らかな着生砂漠(着生植物が生育できない地域)が存在し(図1)、郊外に向かうにつれて着生植物の種類、量ともに増加した。1990年代に調査を行った菅と大橋(東京都環境研究所)は、大気の乾燥化傾向は変わらないにもかかわらず、コケ類の生育が増加していることを報告し、大気汚染の影響が最も大きいことを示唆している。前回と同一の方法で現在の地域区分を行うと、都心部の着生砂漠が見られなくなった(図2)。このことは、二酸化硫黄濃度の経年変化(図3)にも現れている。
1970年代の宇都宮市の中心部及び東部の内陸工業団地の大気汚染レベルは東京都や臨海工業地帯に比べて相当に低いものであったが、コケ類が異常に少ない地域が存在していた。主に小・中学校の校庭のソメイヨシノについて、同一場所を再調査した結果、サヤゴケ、ヒロハツヤゴケやウメノキゴケなどの生育が認められた(図4)。この地域の大気汚染の経年変化を見ると、二酸化硫黄の濃度が前回調査時に比べて半滅していた(図5)。このことから、大気環境の改善が樹皮上のコケ類の生育を可能にしたものと推察される。
人工酸性雨(硫酸:塩酸:硝酸の当量比2:2:1混合液)で処理した栽培実験では、大気汚染に最も強いとされているサヤゴケやコモチイトゴケではpHの低下に伴う成長量の減少は少ない。大気汚染地域に深く侵入する種類や針葉樹上を好む種類は広葉樹上だけに育成する種類に比べて酸性耐性がやや大であったが、致死的濃度はpHで3.0未満であった。
濃度1~10meq/lの硫酸処理を行ったコケのSOD活性を測定したところ、大気汚染にやや弱いとされるハイゴケでは低濃度の場合のみSOD活性がほぼ倍増し(図6)、植物体内の活性酸素消去系が酸によるストレス解消に効果があったこを示唆する結果となった。
なお、本研究は環境庁地球環境研究総合推進費(環境酸性化)による。
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カテゴリ うめ 乾燥

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