熱帯雨林における微気象観測とエネルギー・水蒸気輸送量の推定

タイトル 熱帯雨林における微気象観測とエネルギー・水蒸気輸送量の推定
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者 谷 誠
大谷 義一
渡辺 力
岡野 通明
山野井 克己
Abdul Rahim Nik
発行年度 1995
背景・ねらい 熱帯雨林の気象特性を明らかにすることは、天然更新機構を明らかにするために必要であるばかりでなく、広域の気候形成における熱帯雨林の役割を解明する上でも重要になっている。しかし、大気大循環モデルによる予測研究がさかんであるのに比べ、気候形成作用の基本である熱帯林と大気間のエネルギー交換量を含むような、詳細な気象観測の例は少ない。そこで、森林総研では、環境庁地球環境研究総合推進費を得て、マレーシア森林研究所との共同研究を進めており、半島マレーシアPasoh森林保護区の低地熱帯雨林に設置された52mのタワーにおける気象観測を実施した(写真)。
成果の内容・特徴 まず、森林樹冠上から林床に至る、気温・水蒸気圧(絶対湿度)・風速の鉛直分布を測定した。各高さの気温の日変化は図1に示すようであり、日中は樹冠部における温度差が小さく、樹冠下部から林床付近にかけて低温になることが分かった。これは、樹冠層の幅が厚く、エネルギーの交換作用が広い範囲にわたって生じるためであると推定された。
植物群落においては、太陽及び大気からもたらされる放射エネルギーは、主に、大気の加熱に使われる顕熱、水の蒸発に使われる潜熱、群落内貯熱に交換される。これらの量を測ることが、気候に及ぼす群落条件の影響を解明するために重要である。そこで、樹冠上の2つの高度での気温差と湿度差から、ボーエン比法によって顕熱及び潜熱の交換量を推定した。なお、群落内貯熱については、上に述べた気温や湿度の鉛直分布測定から推定することにした。
エネルギー交換量の推定結果を、各気象条件の測定結果とともに、図2、3に示す。図2は比較的雨の少ない時期の結果である。しかし、午後に顕熱がやや大きくなるとはいえ、顕熱より蒸発潜熱が大きい傾向がある。また、図3は雨季の最中にあり、この日も午後に降雨が記録されている。潜熱の占める割合は一日中たいへん大きく、特に降雨の後には、有効エネルギー(放射エネルギーと群落貯熱変化量の和)よりも大きな潜熱が生じている。これは、樹冠に付着した雨水の蒸発(遮断蒸発)によるもので、気温の差をみると、上よりも下の方が低温になっており、下向きの顕熱が、放射エネルギーとともに、遮断蒸発に必要な潜熱の熱源になっていると推定される。
以上のように、熱帯雨林においては潜熱が大きく、大気加熱が抑制される結果が得られた。
図表1 212418-1.jpg
図表2 212418-2.gif
図表3 212418-3.gif
図表4 212418-4.gif
図表5 212418-5.png
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カテゴリ 輸送

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