タイトル | 北海道主要虫媒花樹木の受粉様式の解明 |
---|---|
担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
石田 清 長坂 寿俊 |
発行年度 | 1996 |
背景・ねらい | 北海道には20種以上もの虫媒花樹木が分布している。しかしながら、これらの樹木の資源管理を行う時に必要となる繁殖様式についての情報は少ない。虫媒花樹木の繁殖様式を理解するためには、どのような昆虫が訪花し、どのように花粉が運ばれ受粉するかという問題が重要である。そこで、北海道の主要虫媒花樹木の訪花昆虫相と訪花頻度の調査を行った。また、個体密度が低いホオノキについては、自家受粉による繁殖の実態と花粉の移動距離を調べた。 |
成果の内容・特徴 | イタヤカエデ・キタコブシ・アオダモ・ホオノキ・シナノキを対象に訪花昆虫の観察を行った。キタコブシには主としてケシキスイ科の小甲虫が訪花し、イタヤカエデ・シナノキにはハナバチ類・ハナアブ類・ハエ類が訪花していた(図1)。一方、アオダモとホオノキには多様な分類群の昆虫が訪花していた。効果的な花粉媒花者と考えられているハナバチ類の訪花頻度は樹種によって異なることから、花粉の移動距離も樹種によって異なるものと考えられる。 訪花頻度の低いイタヤカエデとアオダモについては花粉トラップを用いて空中花粉の測定を行った。イタヤカエデでは、空中花粉はほとんど認められなかったが、アオダモでは10m離れた場所でも多量の空中花粉が認められた(図2)。母樹からの距離と空中花粉数との関係を検討した結果、アオダモが91%の花粉を飛ばす距離は16m~44mと推定され、近縁種の風媒花樹木ペンシルバニアトネリコと同程度に花粉を飛ばすものと考えられた。 札幌市内のホオノキ集団から採取した種子を用いてアロザイムの遺伝子型を調べ、他殖率(他家受粉由来の種子の割合)と花粉の移動距離を推定した。3集団で推定された他殖率は低く、半数以上の種子が自家受粉由来であると推定された(表1)。他個体に受粉される花粉の移動実態についてみると、母樹から25m以上離れた位置にある開花木の花粉由来の種子は、調査した種子の18%以上を占めていた。しかしながら、50m以上離れた開花木の花粉由来の種子は認められなかった。これから、他個体の花に運ばれるホオノキ花粉の移動距離は50m以内と短いものと推定される。従って、個体密度の低い林分や孤立木の他殖率は低いものと予想される。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
カテゴリ | かえで 受粉 繁殖性改善 |