タイトル | きのこ栽培における変異とその発生機構 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
馬場崎 勝彦 |
発行年度 | 1998 |
背景・ねらい | きのこ栽培は農山村の重要な収入源で、平成9年度には年産2,656億円と、林業粗収益の約4割を占めており、その安定化を図ることは重要な課題である。近年、ナメコの空調施設栽培等で、子実体(きのこ)が栽培計画通りに発生しない発生不良現象と判断される生産被害が多数報告されるようになり、生産者、並びに種菌会社等から、発生不良現象など栽培きのこの変異に対する早急な対策や解決が要望されるようになった。そこで、本研究では、きのこ栽培における変異発生機椎を解明するとともに、その回避法の開発を行った。 |
成果の内容・特徴 | ナメコ種菌の構成菌糸をプロトプラスト法で分離し、その再生菌株の特性を調べると、分離源である種菌の特性と異なるばかりでなく、再生菌株間でも大きく異なった。これは、種菌が特性の異なる菌糸の集合体であることを示唆する。次に、個々の種菌椎成菌糸の特性が、種菌全体の特性にいかなる形で影響するか調べるために二員栽培法を開発した。これは、鋸屑培地の接種面を2等分割し、そこに特性の異なる種菌を対峙するように接種し、栽培する方法で、接種源に用いた2種類の種菌の相互作用も同時に分かる方法である。白色ナメコ種菌と褐色ナメコ種菌の二員栽培では、白色・褐色キメラ子実体が形成され、ナメコの子実体形成機構として1子実体・多菌糸起源を初めて実証することに成功した(写真1)。また、キメラ子実体褐色部位から得た組織分離菌株の栽培では、1菌床から褐色、白色及びキメラ子実体の三者が混在する子実体形成が起こった(写真2)。これは、特性の異なる菌糸が混在する種菌の栽培では、培養の個々の部分で菌糸の混合比が変化し、その菌糸状態の反映として、例えば、褐色、白色、キメラ子実体が形成されること、つまり、変異が起こることを示す。また、同一種菌から得た子実体形成所要日数の短い正常菌株と長い発生不良菌株の二員栽培では、発生不良菌株を接種した面での栽培特性が正常菌株の特性に近づく等、発生不良の抑制が起きた(写真3)。これは、栽培特性の決定に種菌構成菌糸間の相互作用が強く働くことを示唆した。これらの結果から、きのこ、特にナメコ栽培における変異の発生機構では、菌糸混合比の変化や菌糸間相互作用など細胞生物学的要因が、遺伝的要因と同様に重要な役割を果たすと結論できた。また、発生不良の回避法として、発生不良を起こした種菌が内包する優良菌糸をプロトプラスト再生菌株として回収し、新たに種菌として用いる種菌純化法を開発した。本法の実用性はヒラタケ栽培現場で確認した(写真4)。 なお、本研究は農林水産技術会議特別研究「きのこ菌糸の変異判別及び予防技術の開発」による。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
図表7 | ![]() |
図表8 | ![]() |
カテゴリ | 施設栽培 なめこ 予防技術 |