日本の森林にはどのような雨が降っているか

タイトル 日本の森林にはどのような雨が降っているか
担当機関 森林総合研究所
研究期間
研究担当者
発行年度 1999
要約 全国での観測の結果から、森林域の降水は依然「酸性雨」であり、酸性原因物質のうち硝酸の割合が増加傾向にあること、樹木衰退原因の多くは風雪・病虫害や過密・被圧であり、土壌の酸性化は進んでいないことを示した。
背景・ねらい 酸性雨は化石燃料の燃焼に起因する低濃度の広域汚染であり、森林への影響は蓄積的・慢性的であるため影響の早期発見が対策の鍵を握る。特に近年、自動車の普及に伴う窒素酸化物の増加に加え、大陸からの越境汚染の拡大による我が国森林への影響が懸念されている。このため森林総合研究所では本・支所に観測点を設け、1990年から10年間にわたって降水、土壌、森林の衰退度などを継続して観測すると共に、林野庁による全国的な「酸性雨等森林衰退モニタリング事業」の情報を併せて解析することで、我が国の森林域における降水の変動傾向と森林への影響の監視を続けている。
成果の内容・特徴 日本の森林には一体どのような雨が降っているのか。札幌、盛岡、つくば、木曽福島、京都、高知、熊本の観測点での最近5年間の降水の年平均pHは4.5-5.4で、ほとんどが依然pH5.6以下のいわゆる「酸性雨」である。しかし、年平均pHは各観測点でも全国平均でもこの5年間ほぼ横道いか、わずかに上昇傾向にあり降水の酸性化は進んでいない(図1)。また、溶存成分濃度の指標である電気伝導度(EC)は亜高山帯で低く、人為による汚染のため都市周辺で高いが、全国平均でみればこの3年間の値はそれ以前より低く、汚染は低減の方向にありそうである(図1)。

さらに、降水を酸性にする硫酸と硝酸のうち、硫酸の負荷量(kg/ha/年)はほぼ横道いに対し自動車排気ガスなどに由来する硝酸は増加傾向にある(図2)。その結果、酸性化に対する硫酸と硝酸の寄与の目安である非海塩由来硫酸イオンに対する硝酸イオンの比(N/S比)は、5年間で0.51から0.61に上昇し(図2)、硝酸の酸性化への寄与が増大している。また、窒素全体の負荷量(kg/ha/年)も増加傾向にあり、この2年は硫黄の負荷量を上回る結果となっている(図2)。窒素は植物の必須元素であるが、過剰な窒素の負荷は森林衰退、土壌の酸性化などの悪影響を引き起こすことが指摘されている。

今のところ、観測点の森林に衰退の兆候は見られないし、林野庁「酸性雨等森林衰退モニタリング事業」の全国約844地点のデータ解析結果からも樹木衰退の多くは風雪害、病虫害、過密・被圧によるものであり(図3)、土壌の酸性化も全国的にみれば進んでいない(図4)。しかし、今後、東アジア諸国の経済成長に伴う大陸からの越境汚染の拡大が予想され、我が国の森林もその影響を被る恐れがある。モニタリングにより注意深く監視しその影響を予測することが、これまで以上に必要になっている。
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図表4 212507-4.gif
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カテゴリ 病害虫 モニタリング

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