タイトル | 九州地域で猛威をふるうシラカシ枝枯れ症状の原因の解明 |
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担当機関 | 森林総合研究所 |
研究期間 | |
研究担当者 |
石原 誠 秋庭 満輝 河邉 祐嗣 池田 武文 |
発行年度 | 1999 |
要約 | シラカシ枝枯れ被害は、病原体探索の結果、一群の細菌が原因であり、シラカシ枝枯細菌病と命名した。本菌は細菌学的性質と宿主範囲から、Xanthomonas campestrisの新病原型であることが判った。 |
背景・ねらい | 九州地域では、カシ類をはじめとして緑化樹や造林用の苗木生産が盛んである。1980年代になって苗畑で育成中のシラカシに伝染性の枝枯れ被害(写真1)が発生し、問題となっていた。原因が不明であったため、適切な防除処置がなされないまま、被害は一部の栽培地域から九州各地に急速に拡大し、早急な対策が求められていた。防除技術の開発を行うため栽培カシ類に発生している枝枯れ症状の原因の解明を行った。 |
成果の内容・特徴 | 薬剤防除試験において抗糸状菌剤に効果が認められず、抗細菌剤に効果が認められたこと、罹病枝表面や組織中に菌泥や細菌粒子が頻繁に観察されたことなどから、病原体として細菌が疑われた。そこで、シラカシの罹病根から細菌の分離を試みたところ、一定の黄色細菌が高頻度に分離された(写真2)。細菌の接種試験の結果、枝枯れ症状が再現され、再現部位から接種した細菌が再分離された。以上のことから、この黄色細菌が枝枯れ症状の病原体であることが証明され、新病害「シラカシ枝枯細菌病」と命名した。 本菌は一本の極鞭毛を有し(写真3)、グラム陰性、糖を酸化的に分解、xanthomonadinsを産生した。また、糖を含む培地上での粘質集落の形成、カゼインの消化、エスクリンの加水分解、ゼラチンの液化、糖からの酸の産生等の細菌学的性質の一致から、著名な植物病原細菌であるXanthomonas campestrisに属することが分かった。本種の中には病気を起こす植物種の違いによって140以上の異なるタイプ(病原型)が存在する。DNA相同性試験によってシラカシの病原細菌と近緑であると擬われた既知の病原型と比較したところ、細菌学的性質においては明瞭な相違点を見出せなかった。しかし、本菌はクルミ、ハシバミ等の既知の病原型の宿主植物に病原性を示さず、逆に供試した既知の病原型はシラカシに病原性を示さず、宿主となる植物種が明らかに異なっていた(表1)。また他の広範な植物種に対する接種試験においても本菌の宿主範囲はブナ科内のコナラ属を中心とした3属に限られていた。ブナ科植物に病気を起こすXanthomonas属細菌は世界的に認められていないことから、シラカシ枝枯細菌病菌はX.campestrisの新しい病原型であることが明らかになった。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
図表5 | ![]() |
図表6 | ![]() |
図表7 | ![]() |
図表8 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 くり くるみ 苗木生産 防除 薬剤 |