地球温暖化がブナ林とスギ人工林に与える影響の評価

タイトル 地球温暖化がブナ林とスギ人工林に与える影響の評価
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 田中 信行
八木橋 勉
重永 英年
松本 陽介
垰田 宏
発行年度 2001
要約 ブナ林の分布やスギ人工林の活力度に影響する気候要因を特定し、温暖化気候シナリオに基づいて、温暖化後の適地の変化を予測した。温暖化に対し脆弱であって、今後不適地となる可能性がある地域がそれぞれ特定できた。
背景・ねらい IPCC第2次評価報告書による第一世代のGCMの気候シナリオでは、空間分解能が数百kmと広域の予測だけを行っていて、地形が複雑で面積の小さい日本国内の影響予測には不十分である。気候変動が日本の森林へ与える影響を評価するためには、森林の空間スケールに合う空間分解能をもつ気候シナリオに基づいた影響予測が必要である。環境省地球環境研究総合推進費「地球温暖化による森林生態系の脆弱性の評価に関する研究」プロジェクトの中で行われた日本の森林への影響を評価する研究では、天然林の分布や人工林の活力へ影響を与える要因を特定し、温暖化した場合の影響を予測し、脆弱性を評価することを目標の一つとし、次のようなをあげた。
成果の内容・特徴 日本の冷温帯の代表的な森林であるブナ林とミズナラ林の分布と気候要因の関係解析の結果、冷涼で冬季降水量の多い多雪地域にミズナラ林が少ないことと、温暖で夏季降水量の少ない乾燥地域にブナ林が少ないことが明らかとなった。ブナ林の分布を規定する気候要因を温暖化シナリオCCSR(2090~2099年、空間分解能1kmメッシュ)の気温と降水量の予測値に基づいて変化させた場合に推測される分布可能範囲を特定した(図1)。シナリオ通りの気候変化が起こると、九州、四国、中国地方、紀伊半島、関東地方のブナ林の適地は、わずかを残して消失すると推定されるので、脆弱なブナ林である。北海道では、現在の北限よりも東部や北部に分布可能域が広がるが、温度上昇時には石狩低地帯周辺にブナ林に適さない地域があることや、林分の断片化があるため、石狩低地帯よりも東や北へ分布を拡大することは困難であると考えられる。

温暖化に伴う乾燥と高温の進行により、代表的人工林であるスギ林の衰退が危惧されていることから、スギ林の分布地と気候要因の関係を解析した。乾燥ストレス要因を加味した雨量係数(RI、年平均降水量mm/年平均気温℃)を用いた予測では、渇水年の降水量が温暖化シナリオの予測値の70%であると仮定すると、スギの生存がほとんど不可能な雨量係数(RI)100以下の地域は、現在のスギ林面積の約1%から2090年代には約10%に増加すると予測された。スギが2090年代には消滅する地域は、関東平野に面する北西地域や東北地方の太平洋側の地域と予想された(図2の赤色)。

スギ衰退原因を高温とした場合、すなわち、年平均気温(MT)による予測では、スギが2090年代に消滅する地域(図3の赤色)は、関東以南・以西の太平洋に面した低標高地域で、また、スギ林の衰退地(図3の黄色)は東北地方南部より以南の低標高地域であると予測された。図3において、赤色と黄色で示した消滅および衰退の両者を合わせると、日本全体の森林面積の約10%、現在のスギ林の50%に達する。

なお、本研究は交付金プロジェクト「森林、海洋等におけるCO2収支の評価の高度化」による。
図表1 212542-1.gif
図表2 212542-2.gif
図表3 212542-3.gif
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図表5 212542-5.png
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カテゴリ 乾燥

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