スギの培養細胞からクローンスギの作出に成功

タイトル スギの培養細胞からクローンスギの作出に成功
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 伊ヶ崎 知弘
伊原 徳子
篠原 健司
発行年度 2003
要約 被子植物で報告されている細胞増殖因子ファイトスルフォカイン(PSK)が裸子植物であるスギでも機能していることを発見し、このPSKを利用することで、スギの培養細胞を効率的に不定胚へ分化させることに成功した。
背景・ねらい 遺伝子組換えは遺伝子の機能解析等の基礎研究だけでなく、形質の付与や改良を目指した応用研究にも利用可能な技術です。遺伝子組換えには、目的を達成するための遺伝子、遺伝子導入技術、個体再生技術が必要です。これまで、遺伝子組換えスギの作出例は報告されていません。それは培養細胞から効率の良い個体再生技術が確立されていなかったためです。本研究では、被子植物に存在する細胞増殖因子ファイトスルフォカイン(PSK)が裸子植物であるスギにも存在していることを発見し、このPSKを利用して、スギの培養細胞を効率良く不定胚(種子中の植物になる部分“胚”を培養細胞などから人為的に誘導したもの)へ分化させる技術を開発しました。さらに、この胚を発芽させ、正常なスギ幼植物体にすることにも成功しました。
成果の内容・特徴

裸子植物にも存在する細胞増殖因子ファイトスルホカイン(PSK)

PSKは5つのアミノ酸からなるペプチド(図1A)で、細胞の増殖や特定の方向性を持った器官への分化など、植物ホルモン様の作用を示します。PSKは遺伝子によりコードされる前駆体タンパク質が修飾や切断を受けることにより生成します。これまで、アスパラガス、ニンジン、イネ、シロイヌナズナといった被子植物でその存在が確認されていましたが、裸子植物であるスギにもPSK前駆体タンパク質をコードする遺伝子が存在し、その遺伝子が発現していることを発見しました。スギPSK前駆体遺伝子は102アミノ酸からなるタンパク質(CjPSK1)をコードしますが(図1B)、PSK配列以外の部分では、他の植物のPSK前駆体タンパク質と相同性がほとんどありませんでした(図1C)。

PSKを用いた効率の良いスギ個体再生系の確立

スギ培養細胞の増殖培地にPSKを添加すると、細胞増殖を良好にする効果や、長期間の培養による細胞分裂活性の低下や細胞の褐変を抑制する効果を示しました(図2)。この結果は、スギにおいても被子植物の場合と同様にPSKが機能していることを示しています。また、スギ培養細胞を不定胚へ分化させるための培地にPSKを添加すると、不定胚への分化効率が顕著に上昇しました (図3A、B)。誘導した不定胚は正常に発芽し、幼植物体へと生育しました(図3C)。さらに、PSKを添加した培地で培養細胞を維持すると、不定胚へと分化する能力が高いまま長期間維持することが可能となり、誘導後3年以上経過した培養細胞でも不定胚へ分化させることができます。
本研究の推進により、組換えスギの作出がより現実的になりました。本研究で開発したスギ不定胚誘導技術を活用することにより、花粉でアレルゲンを作らないように細工した遺伝子をスギの培養細胞に導入し、アレルゲンフリーのスギ植物体の作出が可能になります。また、スギ花粉症対策だけでなく、材質の改良や耐病性の付与など遺伝子組換えによる新機能の付与にも活用が期待できます。

本研究の一部は、交付金プロジェクト「遺伝子組換え技術を応用した次世代型植物の開発に関する研究」により行いました。
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カテゴリ アスパラガス にんじん

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