コーナー博士により新種記載されたサルノコシカケ類の分類学的検討

タイトル コーナー博士により新種記載されたサルノコシカケ類の分類学的検討
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 服部 力
発行年度 2003
要約 コーナー博士により報告されたサルノコシカケ類には既知属に含まれないものがあり、3新属を記載した。東南アジアにはサルノコシカケ類の種数が多いだけでなく固有種が多いことが示唆された。
背景・ねらい コーナー博士(E.J.H. Corner)はイギリスの著名な植物学者で、昭和天皇御在位60年を記念して設立された国際生物学賞の第一回受賞者となるなど、日本国内でもその業績は高く評価されています。博士は菌類学者としても知られ、東南アジア産を中心に300種以上のサルノコシカケ類を新種として発表しています(写真1)。サルノコシカケ類は古くから薬として利用されるなど有用な遺伝資源としても注目されています。その利用には正確な種の同定が必要ですが、東南アジア産種は分類学的研究が遅れ、同定の困難なものが多いのが現状です。その意味で、博士のサルノコシカケ類に関する研究は意義深いものです。しかし、残念ながら博士の記載には不明瞭な部分が多く、これら新種とした種の多くは実態が不明でした。
そこで、博士が新種とした東南アジア・西太平洋熱帯地域産種について、現在の分類学に沿って再整理することが必要と考え、記載の基準とした標本に直接あたり、顕微鏡および肉眼的特徴を観察し、最新の知見のもとでその特徴を再記載することにしました。さらに、これまでの情報と併せて、アジア産サルノコシカケ類の生物地理学的考察を行いました。
成果の内容・特徴

新属の記載

Boletopsis subcitrinaGrifola eos(写真2、3)、Rigidoporus flammansの3種は既存の属に該当するものがありませんでした。そこで、それぞれを基準として、CorneroporusRoseofavolusLaetifomesの3新属を発表しました。それほど数の多くない標本の中に3属もの新属菌が含まれていたことは、かなり注目を集めた成果です。限られた標本の中での3新属ということから、東南アジア・西太平洋熱帯地域には、独自の進化を遂げた貴重な種が分布しているといえそうです。

「新種」とするのが妥当な種

これまでに博士の記載した種のうち174種について検討を行いました。そのうち77種は新種とするのが妥当な種で、残る97種は既に記載された種と同種、あるいは不明種等でした。77種のうち47種は属名が現在の分類体系上不適当と考えられ、新たに別の属と組合せました。博士が実際に精力的に採集を行った地域は限られており、依然東南アジアには名前のつかない種類が多数残されています。今後調査が進むと、東南アジア産のサルノコシカケ類の種数は、欧米産の種数を大きく上回るものと予想されます。

生物地理学的新知見

標本を検討する中で、東アジアの温帯地域と東南アジアの山岳地帯に隔離分布する種の存在も明らかになってきました。例えば、ボルネオ島キナバル山高地産のTyromyces roseipileusとして記載された種は、日本国内でアケボノオシロイタケとして知られる種と同一種でした。他にもキナバル山から記載されたT.brunneimontanus(写真4、5)など、同様な分布を示すものがありました。こうした分布様式を示す種が多数存在することはサルノコシカケ類の生物地理学上の新しい発見であり、進化史上も興味深い事実です。
菌類の多くは、高等植物等に比べると分布範囲が広いことが知られています。しかし東アジア温帯地域との共通種を除くと、今回新種として認められた種の多くは、東南アジア等の固有種と考えられます。この地域は、単に種数が多いだけではなく、固有種が多いという意味でも重要な地域であることがわかります。
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カテゴリ 遺伝資源

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