原生林に住むアリにとって二次林は住みやすいか

タイトル 原生林に住むアリにとって二次林は住みやすいか
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 佐藤 重穂
前藤 薫
発行年度 2003
要約 人工林など二次林での森林の機能を評価するために、原生林に住むアリ類の種構成を二次林や人工林と比較して解析した。二次林では原生林に住むアリはみられず、森林伐採の影響が数十年後まで依然として残っていた。
背景・ねらい 西日本の低山帯域では、人間による森林利用が極度に進んだ結果、ほとんど人手の加わっていない老齢自然林( 以下、原生林) はきわめて貴重な存在となり、四国では低山帯の原生林は森林面積の1%以下しか残っていません。こうした原生林の生態系を保全するためには、原生林に住む生き物がどのような環境を利用し、どのようなタイプの森林には生息できるのかを明らかにすることが重要です。
アリ類は種類が多く、ほとんどどこにでもおり、さまざまなものを食べます。環境によって住む種類が違うことがわかってきており、森林の状態をはかるものさしとして使えることが期待されています。さらに、住みかとする植物を他の昆虫から防衛したり、植物の種子散布を行う種類もあり、生態系の重要な一員でもあります。
そこで、人間による森林利用によって、森林に住む生き物がどのように変わっているかを明らかにするために、アリをものさしとして、さまざまなタイプの森林においてどのようなアリ類が生息しているのかを調べて、原生林と人手の加わり方の違う森林との関係を解析しました。
成果の内容・特徴

原生林と二次林の比較

四万十川流域は四国の南西部に位置し、森林率が86%の地域ですが、標高1,500m以上の山岳はなく、ほぼ全域が低山帯です。この地域の人工林率は65%にのぼり、天然林の多くはシイ・カシ類を中心とする常緑広葉樹二次林と、断片化した原生林が散在するにすぎません。原生林、二次林、針葉樹人工林(写真1)という3つのタイプの森林でアリ類の生息調査をしました。
その結果、森林タイプ間でアリ類の種類数は、大きな違いはみられませんでした(表1)。しかし、アリの種構成と森林タイプの関係をみると、原生林と二次林・人工林との間では、アリ類の種構成は大きく異なっていることが分かりました(図1)。二次林や人工林においては、開けた環境を好むとされる種類や、いろいろな環境に住めるとされる種類が多く生息しているのに対して、原生林には森林に生息するとされる種類が多くみられたのです(図2)。カドフシアリ、トゲズネハリアリなど、いくつかの種類は原生林だけに生息していていました。二次林は、伐採後、40年ないし70年を経過していましたが、それでもなお、原生林に特異的な種類がみられず、アリからみればまだ原生林にはほど遠いということになるようです。

結果からいえること

これらの結果から、森林伐採が森林生態系に与える影響は長期間にわたって続き、数十年経ても依然として回復しないことが明らかになりました。
今回はアリ類を対象とした調査であり、今後さらに調査対象の森林を増やしていき、こうした結果がどのような要因でもたらされたのかを解析していくことが必要です。それにより、どのような森林管理、人手の加え方をしていけば、原生林に近い森林生態系に早期に復帰できるかを考えていくことができるのです。

詳しくは:Maeto, K. & Sato, S.(2004) Forest Ecology and Management 187: 213-223. をご覧下さい。
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