スギ花粉から多数のアレルゲン類似遺伝子を発見

タイトル スギ花粉から多数のアレルゲン類似遺伝子を発見
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 二村 典宏
西口 満
伊原(宇治野)徳子
吉村 研介
篠原 健司
発行年度 2006
要約 未知のスギ花粉アレルゲンを探索するために、スギ花粉でどのような遺伝子が働いているかを解析しました。スギ以外の植物で既に知られているアレルゲンと類似する遺伝子が多数見つかり、今後のスギ花粉アレルゲンの解析に貢献することが期待されます。
背景・ねらい 毎年春になると多くの人々を悩ますスギ花粉症は、花粉の中に含まれるアレルゲンが原因となっています。スギ花粉アレルゲンの中には、多くの患者が反応するものと一部の患者しか反応しないものがあり、その全体像は明らかになっていません。現在、スギ花粉アレルゲンとしてCryj1、Cryj2をはじめ数種類が特定されていますが、スギ花粉にはまだ特定されていないアレルゲンが多数あると考えられています。私たちは、未知のスギ花粉アレルゲンを探索するために、スギの成熟花粉で働いている遺伝子を解析しました。
成果の内容・特徴

スギ花粉で働く遺伝子の大規模解析

スギの成熟花粉に由来する遺伝子を大量に解析した結果、1,365種類の遺伝子を収集しました。それらの中には、様々な機能を持つ遺伝子が含まれていました(図1)。過去に報告のなかった遺伝子があることも分かりました。これまでに針葉樹の花粉で働いている遺伝子を大規模に解析した報告はなかったので、世界で初めての報告となります。

スギ花粉中のアレルゲン類似遺伝子の解析

スギ花粉で働く遺伝子の中に既知の植物アレルゲンと類似している遺伝子がないかを調べたところ、Cryj1、Cryj2も含めて17種類存在することが明らかになりました(表1)。Cryj1、Cryj2 以外の15種類は、本研究により初めて明らかになったアレルゲン類似遺伝子です。これらの遺伝子から作られるタンパク質はアレルゲンとして働いている可能性があり、今後検証していく必要があります。
私たちの収集したスギ花粉遺伝子群の情報は、今後、スギ花粉の新規アレルゲンを特定していくうえで大いに役立つと期待されます。そして、安全なペプチド療法やDNAワクチンの開発、新たな機能性食品の開発など、スギ花粉症の治療法の開発にも役立つと考えられます。

本研究は、農林水産省先端技術を活用した農林水産研究高度化事業「スギ雄性不稔個体の品種改良と大量生産技術の確立」による成果です。

詳しくは、Futamura et al. (2006) Tree Physiology 26(12):1517-1528 をご覧ください。
図表1 212688-1.gif
図表2 212688-2.gif
カテゴリ シカ 機能性食品 治療法 品種改良

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