高周波を活用して寸法や含水率の異なる木材を同時に乾かす

タイトル 高周波を活用して寸法や含水率の異なる木材を同時に乾かす
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 小林 功
本田(石川)敦子
黒田 尚宏
発行年度 2008
要約 住宅建築には乾燥材が必要ですが、その種類は様々です。今後、製材工場では寸法は含水率の異なる木材を同時に乾かす必要性が高まることが予想されます。このような需要に応えられる乾燥法を開発しました。
背景・ねらい 現在、住宅設計の多様化が進み、同じデザインの住宅を大量に生産するといった時代は過ぎつつあります。顧客のニーズにあわせて設計し、使用する木材を一棟分ごとに製材する方式もあるほどです。住宅には乾燥材を使います。工場では含水率や大きさの揃った木材を一度にたくさん乾燥処理するのが効率的ですから、大きな製材工場では、木材の寸法や含水率ごとに乾燥機を変えて乾燥しています。しかし、我が国には乾燥機を1~数機しか持たない小さな製材工場が多く、しかも乾燥には時間がかかるので少量の需要への即時対応は難しい状況にあります。
そこで、一つの乾燥機の中で、寸法や含水率の異なる木材を同時に乾燥できる技術の開発を目指しました。
成果の内容・特徴

乾燥方法の考え方

住宅に使う心持ち*の柱材や梁材は乾燥によって割れやすく、また、含水率が高いほど、断面が大きいほど乾燥に時間がかかりますが、これまでの研究によって130℃くらいの過熱蒸気で加熱すると割れにくくなることや、減圧しながら高周波で加熱する(高周波加熱減圧乾燥法)と、低い温度で速く乾くことが分かっています。そこで、これら二つの加熱方法の利点の組み合わせによって(図1)、寸法や含水率が異なる木材を同時に乾燥することを考えました。
工程1)寸法と含水率によってグループ分けを行う(予備試験)
割れずに速く乾燥できても、材の寸法によって終了時期がバラバラでは困ります。そこで、寸法が異なっても同時に終了できるよう、含水率によるグループ分けをします。そのため、工程2と3における含水率と必要処理時間との関係を予備試験を行って把握し、含水率のボーダーラインを設定します。
工程2)過熱蒸気で加熱する(前処理)
工程1で含水率によって分けた木材を、過熱蒸気によって割れ防止のための加熱処理をします。
工程3)高周波加熱減圧乾燥で仕上げる
高周波加熱減圧乾燥によって乾燥の促進と含水率の均一化を図ります。

グループ分けのための予備試験(工程1)と乾燥試験(工程2~3)の実施

製材工場の現場を考慮して、柱用サイズの木材(正角材)と梁用サイズの木材(平角材)を同時に乾燥する場合について試験を行いました。まず、これまでの研究に基づいて工程2と工程3の処理時間と加熱温度を設定して予備試験を行い、処理前の含水率と必要処理時間との関係を調べて統計処理しました。これによって、「工程3の終了時に柱材と平角材が同時に終了する(含水率18%以下になる)ため、乾燥を始める前(工程2の開始時点)に含水率でグループ分けするボーダーライン」を設定しました(工程1:図2)。この試験で得た結果は現場に適用できますし、また、乾燥する木材の含水率が今回とは異なる場合でも、同様の試験を一度だけ行ってボーダーラインを再設定すれば同様の乾燥が行えます。
次に、この方法を使って正角材と平角材の乾燥試験を行い、これらが含水率12~18の範囲に同時に仕上がることを確認しました(工程2および3:図3)。また、変色や材内部の割れが少ないことも確認しました(写真1)。

なお、本研究は「交付金プロジェクト、原木供給と最終用途を連携させるスギの一次加工システムの開発」による成果です。

*心持ち材;角材の中心に樹木の中心部(髄)があるもので、年輪が角材の段目に同心円状に配置します。割れやすい欠点があります。日本の伝統的な木造住宅の柱としてよく用いられます。
図表1 212715-1.gif
図表2 212715-2.gif
図表3 212715-3.gif
図表4 212715-4.jpg
カテゴリ 加工 乾燥 シカ

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