マツノザイセンチュウのDNA情報を利用した簡易なマツ材線虫病診断法の開発

タイトル マツノザイセンチュウのDNA情報を利用した簡易なマツ材線虫病診断法の開発
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 相川 拓也
菊地 泰生
発行年度 2009
要約 専門的な知識や技術を必要としない簡単なマツ材線虫病診断法を開発しました。枯れたマツの材内に存在するマツノザイセンチュウのDNAを検出することによって診断する方法です。
背景・ねらい マツ材線虫病は日本の森林に最も甚大な被害をもたらしている森林病害です。本病の診断のためには、枯れたマツから病原体であるマツノザイセンチュウを検出する必要があります。これまでの一般的な検出法は、枯死したマツから材片を採取し、その材片を水に浸して材内にいる線虫類を分離した後、顕微鏡下でマツノザイセンチュウの存在を確認するという方法です。しかし、この方法では線虫の形態に関する詳しい知識や、顕微鏡などの特殊な機器が不可欠であることから、これまで本病の診断はこれらの人材や機器を備えた専門研究機関でしか行われてきませんでした。そこで私たちは、本病の専門家以外の人たちでも診断ができるよう簡易な診断法を開発しました。
成果の内容・特徴 新しい診断法ではマツノザイセンチュウのDNA情報を利用します。すなわち、枯死したマツの材内に存在するマツノザイセンチュウのDNAを検出することでマツ材線虫病と診断する方法です(DNA診断法)。このDNA診断法は以下の3つのステップで完結します。

1. マツ材片からのDNAの抽出

まず、枯死木から材片を採取し(写真1)持ち帰ります(写真2)。その材片の一部をDNA抽出液の入ったチューブに入れ(写真3)、約55℃で20分間、次いで94℃以上で10分間保温します。この操作により、材片の中に存在する様々な生物(マツノザイセンチュウだけでなくその他の線虫、カビ、バクテリアなど)のDNAが抽出液中に溶け出します。

2. マツノザイセンチュウのDNAの検出

1.で得られたDNA抽出液の一部(写真4)を、マツノザイセンチュウDNAの検出液が入ったチューブに加え(写真5)、約63℃で60分間保温します。この操作により、様々な生物由来のDNAの中からマツノザイセンチュウのDNAだけを特異的に検出することができます。

3. 目視による判定

2.の処理を終えたチューブ内の液体の色でマツ材線虫病の診断を行います。すなわち、液体が緑色の蛍光色を示していれば陽性(材片の中にマツノザイセンチュウのDNAが存在した)、液体の色が反応前と全く変わらず無色であれば陰性(材片の中にマツノザイセンチュウのDNAは存在しなかった)を意味します(写真6)。

DNA診断法の特徴

既往の方法で約2日間要していた診断が約90分で完了します。よって、これまでよりも大幅に診断時間を短縮することができます。また、マツノザイセンチュウのDNA以外には反応しないので近縁な他の線虫種を誤同定する心配がありません。さらに、液体の色で陽性あるいは陰性を判定できるので誰でも一目で結果を知ることができます。このように、本診断法は専門的な知識や技術を一切必要としないことから、人を選ばない操作性に優れた手法と言えます。今後、各現場での診断が可能になれば、これまでよりもより迅速な防除対策の展開が期待できます。このDNA診断法は現在特許出願中であり、(株)ニッポンジーンから“マツ材線虫病診断キット”として平成21年中に発売される予定です。

本研究は森林総合研究所交付金プロジェクト「マツ材線虫病北限未侵入地域における被害拡大危険度予測の高精度化と対応戦略の策定」の成果です。
図表1 212733-1.jpg
カテゴリ 病害虫 防除

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