花芽形成期におけるニホンナシ短果枝上の芽の成長と糖代謝の関係

タイトル 花芽形成期におけるニホンナシ短果枝上の芽の成長と糖代謝の関係
担当機関 (独)農業技術研究機構 果樹研究所
研究期間 2000~2002
研究担当者 伊東明子
羽山裕子
樫村芳記
発行年度 2002
要約 ニホンナシ「幸水」の花芽形成期における短果枝上の芽の成長は、主として芽の糖含量に関連する。一方、短果枝における花芽着生の維持が容易である「長十郎」の芽では「幸水」の芽に比べ糖の取り込みに関わる糖代謝酵素の活性が高い。
キーワード ニホンナシ、花芽形成期、糖、芽の重量増加速度、糖代謝酵素
背景・ねらい 落葉果樹においては、樹体内の炭水化物濃度と花芽着生率との間に正の相関が認められることが多く、花芽を安定的に確保するためには樹体内の炭水化物を十分確保することがきわめて重要と考えられている。一方、わが国の主要な果樹の属するバラ科植物は、ソルビトールを主たる転流糖とするが、ソルビトール転流系を持つ植物での糖代謝やその制御機構、花芽形成期の芽の成長における糖の役割についてはほとんど明らかになっていない。
本研究では、ニホンナシを材料に、花芽形成期の短果枝上の芽における糖含量及び糖代謝酵素の活性を測定し、芽の成長における役割について解析する。
成果の内容・特徴 1.
「幸水」を側枝単位で遮光し、糖供給を強く制限すると、遮光時期によっては芽において糖含量の減少、糖代謝酵素活性の増加が認められる。芽の重量増加速度と糖含量の関係を遮光区と無遮光区の結果を込みにしてみると、芽の重量増加速度はフラクトース、グルコース、ソルビトールの含量と有意な正の相関を示す(図1)。一方、糖代謝酵素の活性は転流糖であるソルビトールの含量と有意な負の相関を示す。
2.
短果枝における花芽着生の維持が困難である品種「幸水」と、容易である品種「長十郎」において、花芽形成期の短果枝上の芽における糖含量と糖代謝酵素の活性を比較すると、糖含量は「幸水」で高く、糖代謝酵素活性は「長十郎」で高い。芽の重量増加速度と糖代謝酵素活性の関係を両品種を込みにしてみると、芽の重量増加速度は糖の取り込みに関わる糖代謝酵素であるNAD依存型ソルビトールデヒドロゲナーゼ(NAD-SDH)及び酸性インベルターゼ(AI)の活性と有意な正の相関を示す(図2)。
3.
以上より、花芽形成期の「幸水」においては、糖含量が芽の成長に強く影響しており、遮光により糖の供給を制限すると糖含量の著しい減少に対応して糖取り込みに関わる酵素の活性が増大するものと考えられる。一方、重量増加速度の速い「長十郎」の芽は「幸水」に比べ糖の利用が活発なため、糖含量は低く、糖の取り込みに関わる酵素活性は高いものと推察される。なお、花芽形成期の芽の成長とNAD依存型ソルビトールデヒドロゲナーゼ及び酸性インベルターゼの活性との間に相関が認められることから、この時期の芽の糖代謝における両酵素の重要性が示唆される。
成果の活用面・留意点 本研究によりニホンナシにおける花芽形成期の芽の成長と糖含量及び糖代謝酵素活性との関係が明らかにされたが、糖代謝酵素の活性制御機構の解明は今後の課題である。
図表1 213078-1.jpg
図表2 213078-2.jpg
カテゴリ ばら 品種

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