タイトル | ミカン産地地域住民の血清中β-クリプトキサンチン濃度に影響する要因は食品ではミカンの関与が最も大きい |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 果樹研究所 |
研究期間 | 2001~2005 |
研究担当者 |
杉浦 実 松本 光 生駒吉識 矢野昌充 |
発行年度 | 2003 |
要約 | ミカン産地地域住民を対象にした食品摂取頻度調査と血液分析の結果から、ミカンに多く含まれるβ-クリプトキサンチンのヒト血清中濃度に影響する要因は食品ではミカンの関与が最も大きい。またミカンの摂取頻度から血清中β-クリプトキサンチン濃度が推定でき、疫学研究において新たな解析指標となる。 |
キーワード | ミカン摂取量、β-クリプトキサンチン、重回帰分析、バイオマーカー |
背景・ねらい | 近年、ミカンに特徴的に多く含まれるβ-クリプトキサンチンに関する機能性研究が進展しており、今後はヒトに対する有効性の検討が重要な課題となっている。 疫学研究をはじめとするヒトレベルでの食品の有効性の評価においては、その食品の摂取頻度を客観的に評価できる有力な生体指標(バイオマーカー)が無い場合、これまでは被験者に対して行う食行動調査のデータをもとにした評価が主であった。しかしながら、得られたデータが正確な食生活習慣を反映しているかという調査の妥当性が重要な問題となっていた。 β-クリプトキサンチンは様々な果物・野菜に含まれているカロテノイド色素の一種であるが、ウンシュウミカンに特徴的に多く含まれており、これまでの研究から他のカロテノイド類に比べて比較的長期間にわたり体内に蓄積されることが明らかとなっている。 本研究では重回帰分析によりミカン以外で血清中β-クリプトキサンチン濃度に影響する要因を明らかにし、またミカンの健康機能性をヒトレベルで評価する際に血清中β-クリプトキサンチン濃度がミカンの摂取量を反映する優れたバイオマーカーとなるか、ミカン産地の地域住民を対象に検証を行った。 |
成果の内容・特徴 | 1. 重回帰分析により、血清中β-クリプトキサンチン濃度に影響する要因は、食品ではミカン摂取量だけが有意に選択される(表1)。 2. カキやモモ、ウメなどの果実、またミカンジュースなどの加工食品にもβ-クリプトキサンチンを含有する食品は多くあるが、これらの食品は何れもその含有量が低い、あるいは調査した集団では日常の食生活で摂取する頻度が低いことから、何れも有意な関連要因では無い。このため、血清中β-クリプトキサンチン濃度に影響する要因は食品ではミカンの関与が最も大きい(表1)。 3. 重回帰分析により、血清中β-クリプトキサンチン濃度に影響する要因は、(a)検査時におけるミカン摂取量、(b)検査2ヶ月前のミカン摂取量、(c)検査する時期、(d)年齢、に加えて、男性では(e)飲酒歴、(f)喫煙歴が、女性では(g)肥満度が選択され、血清中のβ-クリプトキサンチン濃度はこれらの変数でほぼ説明できる(表2)。 4. 表2の重回帰式の妥当性を評価するために、重回帰分析に用いた被験者以外の39検体について、血清中β-クリプトキサンチン濃度の計算値と実際の血清中濃度との相関関係を評価したところ高い相関(r=0.775, P<0.0001)が認められる(図1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 血清中β-クリプトキサンチン濃度に影響するものは食品ではミカンの関与が最も大きく、血清中β-クリプトキサンチンはミカンの健康機能性をヒトレベルで評価する際に優れたバイオマーカーとなる。 2. 重回帰式により血清中β-クリプトキサンチン濃度が推定できることから、疫学研究において血清中濃度の分析が不可能な場合においては、ミカンの摂取量を聞き取ることが新たな解析手段となる可能性がある。 3. 本調査における女性被験者は全て非喫煙者であるため、喫煙歴を有する女性の場合、男女全体でのモデルを用いた方がより適合するデータが得られる可能性がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | うめ 温州みかん かき 加工 機能性 もも |