ウメ「十郎」にマンガン欠乏症が発生する土壌環境

タイトル ウメ「十郎」にマンガン欠乏症が発生する土壌環境
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所
研究期間 2003~2005
研究担当者 井上博道
喜多正幸
柴田健一郎(神奈川農技セ)
川嶋幸喜(神奈川農技セ)
梅宮善章
北尾一郎(神奈川農技セ)
発行年度 2006
要約  ウメ「十郎」にみられる葉の黄白化症状を示すマンガン欠乏症は、葉中マンガン濃度が25 mg kg-1以下、土壌中の交換態マンガン濃度が40 mg kg-1以下、土壌pHが6.0以上の時発生が懸念される。
キーワード ウメ、マンガン欠乏、葉分析、土壌pH、交換態マンガン、葉脈間黄白化症状
背景・ねらい  近年、ウメ「十郎」の葉脈間が黄白化する症状が神奈川県小田原市周辺(黒ボク土と一部、灰色低地土)で発生し、葉の光合成能力低下に伴う果実収量および品質低下が懸念される。そこで、黄白化症状が発生する土壌要因を明らかにし、原因を特定する。
成果の内容・特徴
  1. 葉の黄白化症状(写真1)は主に中位葉から新葉にかけて発生する。5月頃の発生程度を、症状が見られる枝の全枝に占める割合として指数化し、症状の発生した枝がないときは「0」、1割程度の枝に発生が見られると「1」、3割程度で「2」、5割程度で「3」、7割程度で「4」、9割以上で「5」とし、0.5を各指数の中間値とする。
  2. 葉の黄白化症状の発生程度と葉中元素濃度との間には、マンガン(r=-0.792**)においてのみ負の相関が認められた。葉中マンガン濃度が25 mg kg-1以下の時、症状は多発したため(図1)、ウメ「十郎」で発生した葉脈間の黄白化症状はマンガン欠乏症で、葉中マンガン濃度が25 mg kg-1以下で欠乏域になると考えられる。
  3. 土壌の交換態マンガン濃度と発生程度との間に負の相関があり(r=-0.891**)、40 mg kg-1以下の時、症状は多発する(図2)。土壌pHが6.0以上で発生が顕著(図3)であり、土壌pHと葉中マンガン濃度との間に相関(r=-0.844***)がみられる。
成果の活用面・留意点
  1. 症状発生園の一部では「十郎」以外の品種でも症状が見られたため、この基準値はウメ樹のマンガン欠乏の診断の参考となる。
  2. マンガン欠乏症が発生した場合、硫酸マンガンの葉面散布で症状の発生は抑制されるが、石灰質資材の施用を控えるとともに生理的酸性肥料の利用などにより、土壌pHを6.0以下にすることが望ましい。
  3. 果樹の場合、葉脈間が黄白化する症状としてはマグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛の欠乏症が報告されている。土壌pHが高い場合、鉄あるいは亜鉛の欠乏の可能性があるため、土壌pH6.0の基準値はウメ葉中マンガン濃度あるいは土壌の交換態マンガンの基準値と組み合わせて判断した方がよい。
図表1 213184-1.jpg
図表2 213184-2.gif
図表3 213184-3.gif
図表4 213184-4.gif
カテゴリ 肥料 うめ 土壌環境 品種

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