タイトル |
枝垂れ性・八重咲きで、生食可能な観賞用モモ新品種「ひなのたき」(モモ筑波125号) |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
1995~2007 |
研究担当者 |
山口正己
八重垣英明
土師 岳
末貞佑子
三宅正則
鈴木勝征
木原武士
内田 誠
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発行年度 |
2007 |
要約 |
モモ新品種候補「ひたのたき」は、枝垂れ性で、花は重弁、桃色で美しい。成熟期は「あかつき」とほぼ同時期で、果実は150g前後、果肉は黄色、糖度はやや低いが酸味が少なく生食可能で、育種素材や観賞用品種としての利用が見込まれる。
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キーワード |
モモ、新品種、枝垂れ、半不溶質、観賞・生食兼用品種
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背景・ねらい |
モモには生食、加工のほか、樹姿や花を楽しむ観賞用品種があり、花モモとして江戸時代から利用されてきた。しかし、観賞用品種の果実はいずれも100gに満たなく、苦味や酸味が多く、生食に適さず廃棄されてきた。果実が生食可能であれば、花モモはより身近な、有用な樹木としての普及が期待される。農研機構果樹研究所では、モモの低樹高品種開発のために枝垂れ性の花モモと栽培品種との交雑を実施してきたが、その中に枝垂れ性で、花が八重咲きで美しく、果実が生食可能な個体が見いだされたので、観賞用品種としての有用性について評価を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 1995年(平成7年)秋に、農林水産省果樹試験場(現 農研機構果樹研究所)育成の「残雪枝垂れ」後代で枝垂れ性遺伝子をヘテロに有する「G-62-8」(「G-45-1」×「あかつき」)の自殖種子を播種し、翌1996年(平成8年)春に苗圃に移植した。翌年2月に1年生苗木の中から枝垂れ性個体を選抜し、個体番号「G-69-5」を付して定植し、2002年(平成14年)に一次選抜した。同年4月から「モモ筑波125号」の系統名で、モモ(生食用)第8回系統適応性検定試験に供試した結果、平成19年度果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会(落葉果樹)において新品種候補にふさわしいとの結論が得られた。
- 樹勢は強く、樹姿は枝垂れる。開花期はやや遅く、「あかつき」より数日遅く、「残雪枝垂れ」および「源平枝垂れももNo.1」とほぼ同時期である。開花の始めから終わりまで3週間以上であり、開花期間が極めて長いことも特徴のひとつである。花は大きく、花弁は桃色で25枚前後である。花粉を有し、自家結実性である(表1、図1)。
- 果実の収穫期は育成地で7月下旬であり、「残雪枝垂れ」および「源平枝垂れももNo.1」より1ヶ月半以上早く、「あかつき」とほぼ同時期である。果皮の地色は黄色で、着色はぼかし状に中程度入る。果形は卵円形で、縫合線の裂開が発生することがある。果実重は平均で150g前後と小さい。果肉は黄色、半不溶質で、肉質は中、果汁は多い。糖度は9%あまり、酸味は少なく、甘味はやや少ないが生食には供することができる(表2、図2、図3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 既存のモモ栽培地域で栽培が可能であるが、果実品質が栽培品種に較べて劣るので果実販売用には適さない。樹が枝垂れ性で花が重弁・桃色で美しく、果実も利用できるので育種素材としてだけではなく公園や家庭の庭園木としての利用が期待される。
- 雌しべを2本有する花が混じるので、摘果の際には正常果を残す。
- せん孔細菌病、灰星病には罹病性なので、薬剤散布による防除が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
病害虫
育種
加工
栽培技術
新品種
せん孔細菌病
低樹高
播種
品種
品種開発
防除
もも
薬剤
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