タイトル |
道央転換畑における秋まき小麦の収量・品質変動要因と改善策 |
担当機関 |
道立中央農試 |
研究期間 |
2004~2006 |
研究担当者 |
杉川陽一
塚本康貴
安積大治
後藤英次
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発行年度 |
2007 |
要約 |
道央地帯での秋まき小麦における生育・収量の制限要因として、堅密な土壌物理性や水分ストレス、不適切な播種期や施肥が認められる。改善策として、北海道施肥ガイドの遵守、物理性改善や水分ストレス緩和のための密な心土破砕や排水整備が有効である。
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キーワード |
秋まき小麦、転換畑、変動要因、晩播、土壌物理性不良、窒素吸収
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背景・ねらい |
道央地帯の秋まき小麦は道東地帯に比べ収量・品質が劣り、変動の幅も大きい。これには土壌や気象など道央地帯特有の問題があると考えられる。そこで、道央における秋まき小麦の収量・品質安定化のため、その変動要因を明らかにし、改善策を示す。また、収量水準・タンパク質含有率に適合した窒素吸収量の目安を設定する。
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成果の内容・特徴 |
- 現地調査圃場の収量は191~921kg/10a、タンパク質含有率は7.2~13.7%と変動幅が大きく、地域内の変動と同時に年次・地域間でも変動が見られる。タンパク質含有率が基準内(9.7~11.3%)に収まったのは、全体の46%である。
- 現地調査圃場における土壌物理性は、容積重・固相率・硬度が大きく、気相率・易有効水分・飽和透水係数が低いなど、問題を有する圃場が多く認められる(表1)。土壌化学性はpHが基準値(5.5~6.0)より低い割合が高い。
- 現地調査圃場の低収・低品質の事例として、晩播や耕起時の練り返しなどの播種の問題、難透水性・堅密な下層土や高い地下水位などの土壌物理性不良、過剰・不足など不適切な施肥などが認められる(表3)。
- 試験場内の播種期試験において、播種が遅いほど穂数の減少により減収し、特に転換畑での極晩播(10月播種)は、23~35%と大きく減収することが認められる(データ省略)。
- 試験場内の試験において、硬盤層が存在することによって根張りが不良となり、穂数、一穂粒数、窒素吸収量が少なくなることが認められる。20cm、40cmに硬盤が存在する場合は、心土破砕した場合に比べそれぞれ44%、23%減収する(表2)。生育後半の乾燥ストレスにより粗子実重、稔実粒数、千粒重が低下する。地下水位が高いほど、粗子実重およびタンパク質含有率が低くなる(図1)。
- 収量と窒素吸収量の間にr=0.897**と極めて高い相関が見られる(図2)。タンパク質含有率10.5%を目標とした場合の窒素吸収量の目安を図から読みとり、収量水準別に検討したところ、道東地方で示された窒素吸収量と同程度の値を示す。
- 実態調査で抽出された問題点とその改善策を表3に示す。大きく分けて播種の問題、土壌物理性の問題、施肥の問題と分けられ、土壌物理性の影響が多く認められることから、土壌物理性不良を改善することが最も重要と考えられる。制限要因の対策としては、圃場の透排水性向上や物理性改善のために心土破砕を密に実施すること、適期播種を心がけること、適切な施肥を心がけることなど、基本技術を励行することが道央地帯での安定生産のために重要である。
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成果の活用面・留意点 |
- 道央転換畑の秋まき小麦の安定生産に活用できる。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「道央転換畑における秋まき小麦の収量・品質変動要因と改善策」(指導参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
乾燥
小麦
施肥
排水性
播種
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