タイトル |
土壌診断のための簡易分析法 -pH、N、P2O5、SiO2、Cu、Zn、B、Fe2O3- |
担当機関 |
道立上川農試 |
研究期間 |
2006~2007 |
研究担当者 |
田丸浩幸
小野寺政行
二門 世
坂口雅己
柳原哲司
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発行年度 |
2007 |
要約 |
土壌分析の迅速化を図り、土壌診断を一層普及・促進させるため、土壌pH、可給態リン酸、可溶性銅・亜鉛は抽出法の簡便化あるいは統一を、水田の可給態窒素・ケイ酸は培養条件を共通化する。また、遊離酸化鉄・熱水可溶性ホウ素は簡便な別法を採用する。熱水抽出性窒素の簡易法では適用土壌を拡大する。
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キーワード |
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背景・ねらい |
現場における土壌診断の一層の普及・利用の促進を図るために、土壌分析の迅速化や省力・低コスト化が求められている。そこで、土壌分析における抽出法の統一や分析法の簡便化について検討し、現法による分析値へ読み替え可能な簡易分析法を確立する。
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成果の内容・特徴 |
- 土壌pHおよび遊離酸化鉄(Fe2O3)では、土壌診断基準値付近における分析法間の差はそれぞれ0.07ポイント、0.02%と極めて小さく実用的には問題ない(図1、2)。したがって、簡易法の分析値はそのまま現法へ適用できる。さらに、遊離Fe2O3の簡易法では抽出容器のスケールダウン(250→100mL)や静置時間の短縮(48時間→2時間以上)も可能である。
- 可給態リン酸(P2O5)は、診断基準や施肥対応で用いる範囲ではトルオーグ法からブレイ法への読み替え式の適応性が高いため、トルオーグ法での測定へ統一できる(図3)。なお、分析法間の読み替え式は「土壌および作物栄養の診断基準-分析法(改訂版)-(1992)」に示されている式を活用できる。
- 可溶性銅(Cu)、亜鉛(Zn)は、抽出温度が低くなるに従って、分析値が低下するため、抽出温度別の補正係数を用いて補正することで室温での抽出が可能となる(表1)。
- 水田土壌の可給態窒素(N)および可給態(SiO2)では培養条件を共通化でき、その効率的な測定スキームを提案する。培養は、土壌10gに対して水20mLで行い、可給態Nはこの条件の分析値をそのまま現法へ適用できる(図4)。一方、土壌中の可給態SiO2(mg/100g)は、培養窒素の上澄みSi濃度(ppm)から変換する。
- 熱水可溶性ホウ素(B)の定量法は、土壌中の共存成分とくに硝酸の影響が少ないこと、分析操作が簡便であることから、アゾメチンH法を北海道の公定法とする(図5)。
- 熱水抽出性窒素(N)の簡易法は火山性土へも適用できるが、腐植含量により読み替え式は異なる。
以上の結果をまとめて、現法からの変更点および読み替え式を表2に示す。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、多点数の土壌を迅速に診断する必要のある営農指導機関等の分析で活用する。
- 可給態P2O5のトルオーグ法からブレイNo.2法への分析値の読み替えにおける、減増肥の施肥対応区分への適合率は68~84%である。
- 可溶性Cuは2ppm以下の推定値の振れが大きく、その傾向は抽出液温度が低いほど顕著であるため、診断基準の下限値(0.5ppm)付近を精度よく求める場合は、現法で行う。
- 熱水可溶性BのアゾメチンH法では、分析法に従って、脱色を十分行ってから定量する。
- 熱水抽出性Nが実用域内(0~12mg/100g)で簡易法と常法との差が±2mg/100g以内となる割合は鉱質土壌で約90%、火山性土で約70%である。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「土壌診断のための簡易分析法 -pH、N、P2O5、SiO2、Cu、Zn、B、Fe2O3-」(指導参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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カテゴリ |
水田
施肥
低コスト
土壌診断
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