タイトル |
放牧による泌乳牛の糖代謝能の上昇 |
担当機関 |
技術普及部 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
南橋 昭
西道由紀子
松井義貴
堂腰 顕
小山 毅
草刈直仁
出岡謙太郎
石田 亨
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発行年度 |
2008 |
要約 |
糖代謝能(インスリン感受性)は、放牧による4,000カウント(牛歩(コムテック)による測定)程度の歩行運動を4週間程度継続することで上昇し、放牧終了後4週間以内に低下する。
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キーワード |
乳用牛、放牧、歩行、歩数計、糖代謝能、インスリン感受性、血糖減少率
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背景・ねらい |
乳牛において周産期の代謝性疾患の発生と糖代謝異常(インスリン感受性の低下)の関連が指摘されている。一方、ヒトおよびラットでは継続的な運動がインスリン感受性を改善させることが報告されている。そこで、本試験では、放牧による歩行が泌乳牛の糖代謝能に及ぼす影響を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 歩数計(牛歩、コムテック)により測定した泌乳牛の1日の活動量は、昼夜放牧(17hr)、時間制限放牧(5hr)および舎飼期(フリーストール)においてそれぞれ6,229、4,420および2,127カウントであり、それぞれの間に有意差が認められる(P0.05)。
- インスリン負荷テストによる血糖減少率は、舎飼期および放牧終了後4週目では40%未満の個体が供試牛の約半数であり、30%未満の個体が13%である。放牧開始後4週目および放牧終了時の血糖減少率は、40%未満の個体が6~7%で、30%未満の個体はいない(図1)。これらのことから、糖代謝能は放牧により上昇するものと考えられる。
- 血糖減少率は、放牧時間(昼夜放牧、時間制限放牧)、放牧日数(32日未満、50~97日、114~135日)、放牧時期(春夏、春秋、夏秋)、産次(初産、経産)および乳期(泌乳前期、中期、後期)に関わらず、放牧開始後4週目に、舎飼期と比較して有意に高く(P0.05)、放牧終了後4週目に、放牧終了時と比較して有意に低い(P0.05)(表1)。これらのことから、糖代謝能は、5時間程度の時間制限放牧でも放牧開始後4週目には上昇し、放牧終了後4週間以内に低下するものと考えられる。
- 放牧時間に関わらず、1日の活動量が4,000カウントを超えた供試牛のほとんどで放牧開始後4週目の血糖減少率は40%以上である(図2)。血糖減少率を40%以上に保つには、4,000カウント程度の歩行運動を4週間程度継続することが必要と考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 乳牛の周産期における糖代謝異常の改善技術を開発する際の参考となる。
- 周産期とそれ以外の乳期における血糖減少率の基準値は、異なる可能性がある。
- 糖代謝に関与する他の因子(ホルモン、VFA等)については今後検討が必要である。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「放牧による泌乳牛の糖代謝能の向上および肢蹄の健康の改善」(研究参考)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
乳牛
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