バナメイエビの成熟抑制ホルモンの発見

タイトル バナメイエビの成熟抑制ホルモンの発見
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 Marcy Nicole Wilder
川添一郎
大平剛
筒井直昭
発行年度 2006
要約  眼柄切除によらない新しい人為催熟技術開発のため、卵巣培養系を用いた生物活性測定法により、バナメイエビ眼柄内の卵黄形成抑制ホルモン(vitellogenesis-inhibiting hormone : VIH)を探索した結果、VIHの単離に成功した。この成果は、エビ類成熟機構の解明に大きく貢献し、人為催熟技術開発に道を拓くものとして期待される。
背景・ねらい
 エビ類の需要は、日本、米国が最大の輸入国として国際的に高まり、東南アジアを中心に、主に海産エビを用いた養殖生産が急激な発展を遂げてきている。現行では、稚エビから出荷サイズまでの育成方法は確立されてはいるが、安定的な稚エビを得るための成熟した親エビの育成技術は未確立である。そのため、技術全体としては非効率であり、成熟親エビの育成は持続的な養殖技術の開発に対するボトルネックとなっている。この解決策として、エビの成熟を制御するホルモンの利用による、効率的な人為催熟技術の開発を目指している。研究対象にしたエビは、最近東南アジアで盛んに養殖が行われているバナメイ種を用いた。
成果の内容・特徴
  1. エビ類は眼柄切除により卵黄形成が誘導されることから、眼柄内に卵黄形成抑制ホルモン(vitellogenesis-inhibiting hormone : VIH)が含まれていると考えられている。しかし、その存在および作用機構は不明である。甲殻類においては、アメリカンロブスター、オカダンゴムシ、クルマエビからVIHが単離・同定されている。それら3種類のVIHは分子量が約10 kDaのペプチドで、甲殻類血糖上昇ホルモン (crustacean hyperglycemic hormone: CHH) 族のメンバーであるので、バナメイにおいてもCHH族ペプチドのいずれかがVIHである可能性が高い。以上から、バナメイ種のCHHの貯蔵器官として知られている眼柄内に存在するサイナス腺から7種類のcrustacean hyperglycemic hormone (CHH)族ペプチドを単離した(図1)。
  2. 1.で単離したCHH族ペプチドのVIH活性を検討するために、エビ卵巣を用いた簡易なVIH生物活性測定方法を開発した。
  3. 2.のVIH生物活性測定方法を用いて、7種類のCHH族ペプチのVIH活性を測定した。その結果、6種類にVIH活性があったので、この6種類をVIHと同定した(図2)。
  4. VIH活性の力価が一番強いペプチドの構造を決定した。

成果の活用面・留意点
  1. バナメイ体内に存在する内在性のVIHを抑制すれば、成熟が促進される。
  2. VIH分泌を促す環境要因が明らかになれば、その要因の制御で人為催熟が可能になる。
  3. 本成果を元に人為催熟技術が確立すれば、エビ類種苗生産の安定化に大きく貢献する。

図表1 214681-1.gif
図表2 214681-2.pdf
図表3 214681-3.gif
カテゴリ 出荷調整 なす

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