タイトル | 大区画水田を対象とした水稲局所管理システム |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 1998~2002 |
研究担当者 |
佐々木良治 柴田洋一 小林恭 杉本光穂 大嶺政朗 帖佐直 鳥山和伸 齋藤仁藏 |
発行年度 | 2002 |
要約 | 水稲局所管理システムでは、近赤外分析計で計測した土壌全窒素量等から基肥・穂肥マップを作成し、近赤外画像から推定した窒素吸収量で穂肥マップを修正し、可変散布機で局所施肥を実行する。また、収量マップから地力マップの改訂を行い次作に反映させる。本システムを導入し、水稲の窒素吸収量を制御することにより収量と玄米タンパク含量の均一化が可能である。 |
背景・ねらい | 水田の大区画化で生産性向上等が期待されており、北陸地域では第4次土地改良長期計画で30%(約9万ha)の水田が大区画化される予定である。しかし、造成後の地力ムラにより米の高品質安定生産が困難となっている事例が各地で報告されている。そこで、大区画水田で安定的に高品質米を生産するための水稲局所管理システムを開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 開発した水稲局所管理システムは次の要素から構成される。 1)地力窒素(土壌から供給される窒素量)と窒素吸収量のマップから基肥・穂肥マップを作成する等の機能をもつ局所管理ソフト、2)窒素吸収量を計測地図化する画像マッピングシステム、3)施肥マップに従った施肥を行う可変散布機、4)収量を計測地図化する収量コンバイン。 2. 水稲局所管理システムは下記のように実行する(図1)。 1)多点数を省力的に採取できる土壌サンプラーを用いて、大区画水田の土壌を10mメッシュごとに採取し、近赤外分析計で土壌全窒素量を計測する。前年の施肥量および収量を基に地力窒素量を算出し、地力窒素マップを作成する。 2)局所管理ソフトを用いて、地力窒素マップから目標収量に応じて基肥マップおよび穂肥マップを作成する。基肥を可変散布機で施用する。 3)画像マッピングシステムを用い、幼穂分化期に水稲群落の上からCCDカメラで近赤外画像を撮影し、植被率(単位面積あたりの稲体の鉛直投影面積割合)を把握する。得られた植被率から窒素吸収量を推定し窒素吸収量マップを作成する。窒素吸収量マップを基に、局所管理ソフトで穂肥マップを作成する。穂肥は可変散布機で施用する。 4)収量コンバインで収量をメッシュごとに算出し、収量マップを作成する。この収量マップと当作の基肥・穂肥量から地力窒素マップを改訂し、それを次作の基肥・穂肥マップに反映させる。 3. 水稲局所管理システムの導入効果 1)局所管理により、水稲窒素吸収量のバラツキは地力窒素量のバラツキよりも減少する(図2)。 2)局所管理システム導入前の圃場内収量ムラの程度を平均粗玄米収量の±30kg/10aに入る面積割合で表すと約4割であったが、局所管理システム導入後には約7割となり収量が平準化される。なお、導入後のコシヒカリの粗玄米収量は563kg/10aであった。 3)品質面からの効果として、局所管理システム導入前には玄米タンパク含量が4.5%~7.5%に分布したのに対して、局所管理システム導入後は4.5~6.0%と均質化が図られ、北陸地域での目標値(6.5%以下)を実現できた(図3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本システムの導入主体としては、地域の米生産を担い、コスト面でも対応可能な農協(JA)が適当である。導入費用は、土壌サンプラ-(市販)57万円、画像マッピングシステム80万円、収量コンバインへの改造費80万円(いずれも試作労賃、ソフト費用を無視した概算金額)等である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 管理システム 近赤外分析 コスト 水田 水稲 施肥 |