タイトル | インターネットで利用できるナシ黒星病発病予測モデル |
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担当機関 | 千葉農総研 |
研究期間 | 1999~2003 |
研究担当者 |
Laurenson Matthew(中央農研) 菅原幸治(中央農研) 大谷徹 竹内妙子 田中慶(中央農研) 渡邊朋也(中央農研) 梅本清作 |
発行年度 | 2003 |
要約 | ナシ黒星病発病予測モデルは、温度と濡れ時間の気象データから、病原菌の感染時期を推定し、発病程度を高い精度で予測できる。モデルの計算はインターネットに接続されたコンピュータから誰でも実行可能である。 |
キーワード | ナシ、ナシ黒星病、発病予測モデル、Duthieの式、温度、濡れ時間、インターネット |
背景・ねらい | ナシ生産では薬剤散布回数の低減が最重要課題のひとつであり、生産現場において防除の要否や防除適期の判断を可能とする情報提供システムの構築が望まれる。その一環として、主要病害であるナシ黒星病を対象に、インターネット上で稼働する、気象データを用いた発病予測モデルを作成する。 |
成果の内容・特徴 | 1. ナシ黒星病発病予測モデルには、温度と濡れ継続時間を変数として病原菌の感染程度を表すDuthie(1997)の式を採用する。各パラメーターは、感染に必要な最短濡れ時間が8.8時間、感染最適温度が18.5℃であることなどを示す(図1)。 2. 温度及び葉の濡れの継続時間は、ナシ園に設置した温度センサーと濡れセンサー(Young et al., 1979、図2)により計測する。 3. 展葉中のナシ鉢苗を黒星病多発園に4~7日間設置し、時期ごとに鉢苗を替えて繰り返し曝露接種試験を行った結果、曝露期間中の気象データから発病予測モデルにより算出される発病度の推移と、各曝露時期の鉢苗の新梢葉上に発生した病斑数の推移はよく一致する(図3)。このことから、発病予測モデルの適合性は高いと判断される。 4. 本発病予測モデルは、Javaプログラミング技術によりインターネット上で利用できるAppletの形にしている。また、ナシ園の温度と濡れの計測データは随時データベースサーバに送信される仕組みにしているため、最新の気象データを利用してモデルを実行できる(図4)。 5. 本発病予測モデルは気象データ仲介ソフト“MetBroker”を介して実行される。モデルの計算にはナシ園のデータだけではなく、“MetBroker”に登録されている、各地のAMeDASを含む気象データを用いることができる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本発病予測モデルは、中央農業総合研究センター農業情報研究部によるホームページ「Java による作物生育、病害虫・雑草発生予測モデル」内で試験的に公開されおり、次のURLにアクセスしてモデルを実行できる。 URL: http://cse.naro.affrc.go.jp/ketanaka/model/2. AMeDASや気象ロボット等、通常得られる気象情報には濡れセンサーのデータがないが、降雨観測時間や湿度から濡れの発生の有無を推定するモデルのAppletを用いることにより、濡れ継続時間の推定値を計算できる。 3. 濡れセンサーは機種や設置方法によって出力特性が異なることがあるため、モデルを実行する際には濡れの発生を判定する閾値を調整する必要がある。 4. 本モデルは、気象による病原菌の感染好適条件を検出するものであり、実際の発病は、胞子の飛散量なども影響する。 5. 感染に一定の濡れ継続時間を要する病害であれば、Duthieの式のパラメーター値を変更することで、本発病予測モデルを利用できる可能性がある。 |
図表1 | ![]() |
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