乳化病菌から単離した新規結晶タンパク質の殺虫活性

タイトル 乳化病菌から単離した新規結晶タンパク質の殺虫活性
担当機関 千葉農総研
研究期間 2002~2003
研究担当者 横山とも子
吉井幸子
深見正信
発行年度 2004
要約 乳化病菌から単離した遺伝子cry43Aa1は、新規の結晶タンパク質をコードする遺伝子であり、大腸菌を宿主とした発現系を用いて大量発現できる。発現するCry43Aa1タンパク質は、コガネムシ類幼虫に対して強い摂食阻害及び殺虫活性を示す。
キーワード 乳化病菌、結晶タンパク質、コガネムシ類幼虫、大量発現系
背景・ねらい 乳化病菌セマダラ株は、コガネムシ類幼虫に対して高い殺虫活性を持っているが、感染源となる胞子のうを人工培養することは難しく、本菌を利用した防除剤の開発を妨げている。一方、胞子のう中に含まれる結晶タンパク質は、幼虫に対して摂食阻害及び殺虫活性を持っている。そこで、セマダラ株から殺虫性結晶タンパク質をコードする遺伝子を単離する。単離した遺伝子を用いて、結晶タンパク質の大量発現系を構築し、殺虫性結晶タンパク質を利用した防除剤の開発を目指す。
成果の内容・特徴 1.
セマダラ株の全DNAライブラリーから、結晶タンパク質特異的抗血清を用い、抗体陽性クローンを選抜した。約17kbの挿入断片を持つクローンについて挿入断片の全塩基配列を決定したところ、2つの完全長の結晶タンパク質遺伝子及び1つの不完全長の結晶タンパク質遺伝子が含まれていた。これらの遺伝子は、BT Crystal Protein Nomenclature Committee(http://www.biols.susx.ac.uk/home/Neil_Crickmore/Bt/index.html)により新規の結晶タンパク質をコードしていると判断され、それぞれcry43Aa1(4,032 bp)、cry43Ba1(3,996 bp)、cry43-likeと命名された。
2.
2種類の完全長の結晶タンパク質遺伝子(cry43Aa1、cry43Ba1)をpTrc99Aベクターに挿入し、大腸菌BL21株に導入して得られた発現クローンの懸濁液を、ドウガネブイブイ1齢幼虫に腐葉土とともに食べさせると、cry43Aa1発現クローンのみが幼虫に対して強い摂食阻害及び殺虫活性を示す(図1、表1)。
3.
前項のcry43Aa1発現クローンは若齢幼虫には高い殺虫性を示すが、幼虫の齢期が進むと殺虫活性は低下する。しかし、cry43Aa1発現クローンと、セマダラ株の少量の胞子のう(感染に必要な量の1/10)とを混合した懸濁液は、齢期の進んだ幼虫に対しても、それぞれ単独の場合より、殺虫活性や摂食阻害効果が増大する(表2)。
4.
cry43Aa1遺伝子をpkk223-3ベクターに挿入し、大腸菌BL21(DE3)株に導入して得られた発現クローンをLB培地で37℃、16時間振とう培養することにより、培養液1 mlあたり100~200 μgのCry43Aa1タンパク質を発現させることができる。Cry43Aa1タンパク質は、5 μg/腐葉土1 g加えることにより若齢幼虫をほぼ100%死亡させることができる。Cry43Aa1タンパク質の発現量は、SDS-PAGEのバンドの濃さにより推定できる。
5.
前項の発現クローン菌体は、65℃・15分、70℃・10分または75℃・5分の熱処理により完全に死滅するが、Cry43Aa1タンパク質の殺虫活性は保持できる(表3)。
成果の活用面・留意点 1.
大腸菌を宿主とする発現系を用いて作られる結晶タンパク質は、コガネムシ類幼虫の防除剤として利用可能である。今後、実用化に向け、さらに低コストで安定的な発現クローンの大量培養法及び製剤化の開発を行う必要がある。
図表1 217762-1.gif
図表2 217762-2.jpg
図表3 217762-3.gif
図表4 217762-4.gif
カテゴリ 病害虫 低コスト 防除

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