タイトル | 製パン性が優れ、穂発芽ややし難い硬質小麦新品種候補系統 「東山38号」 |
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担当機関 | 長野農事試 |
研究期間 | 1995~2003 |
研究担当者 |
久保田基成 牛山智彦 近藤武晴 後藤和美 高橋信夫 細野 哲 酒井長雄 上原 泰 新井利直 石川吾郎(東北農研) 前島秀和 谷口岳志 中村俊樹(東北農研) 中村和弘 中澤伸夫 田淵秀樹 |
発行年度 | 2004 |
要約 | 小麦「東山38号」は硬質小麦で、高分子量グルテニンサブユニット5+10を持ち、蛋白質含量がやや高くグルテンが強靱で製パン適性が優れる。穂発芽性はやや難であり、稈長がやや長く耐倒伏性はやや弱い。長野県で認定品種に採用。 |
キーワード | コムギ、硬質、製パン性、耐倒伏性、穂発芽性、トウモロコシ法、グルテン |
背景・ねらい | 食の安全、地産地消の要求が強まる中で、国産小麦の地粉でパンを、また、学校給食に国産小麦でパンを作りたいという要望がきわめて強い。しかし、パン用の硬質小麦は穂発芽しやすい晩生品種が多く、関東北部・東山地方及び南東北地方では、良質のパン用硬質小麦の生産は困難であった。そのため、これら地域に適応するグルテンが強靱で耐穂発芽性が優れた硬質小麦の育成を図った。 |
成果の内容・特徴 | 「東山38号」は、半数体育種法により早生、穂発芽性難、良質パン用品種を早期に育成することを育種目標に、1995年度、長野県農事試験場において、グルテンが強靱な「KS831957」を母とし、難穂発芽性で早生の「西海179号」を父として人工交配を行い、得られた雑種第一代においてトウモロコシ法による半数体育種法を用い固定化を図り、以降、系統選抜を図ってきたものである。2003年度播種した系統の世代は半数体倍加後第8代である。 育成地では標準品種「シラネコムギ」と比較して次のような特徴がある(図1)。 1. 播性程度はII、外穎の色は淡黄、穂型は紡錘状の有芒種である。 2. 出穂期、成熟期はほぼ同等の中生種である。 3. 稈長は長く、穂長は同等、穂数は多いが収量はやや低い。 4. 容積重は同程度で、千粒重はやや大きく、原麦粒の見かけの品質は同等である。 5. 倒伏にやや弱く、耐凍上性は同等だが、耐寒性、耐雪性はやや劣る。 6. 穂発芽性はやや難で優れる。しま萎縮病抵抗性は強で優れ、赤かび病抵抗性は同等のやや弱、うどんこ病抵抗性はやや劣る中、赤さび病抵抗性は同等の中である。 7. 粉の蛋白質含量及び灰分がやや高い。 8. 粉の色は明るさがやや低いが、赤みがやや低く、黄色みは高い。 9. アミロース含量はやや低く、グルテニンサブユニット5+10を持つ。 10. グルテンインデックスが高く、グルテンが強靱である。 11. 製パン性評価点が高い。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 良質パン用小麦生産のためには原粒の粗蛋白質含量が11.5%~14.0%の小麦生産が求められる。このため、出穂期追肥を必ず行う。 2. 穂数が多く、長稈で耐倒伏性は十分でないので、施肥量と施肥時期に注意を払うこと。 3. 越冬性は十分ではないので高冷地、多雪地への作付けはさける。 |
図表1 | |
カテゴリ | 育種 萎縮病 うどんこ病 小麦 新品種 施肥 耐寒性 抵抗性 とうもろこし 播種 品種 |