タイトル | シクラメン園芸品種(Cyclamen persicum)、野生種(C. graecum)及びそれらの種間雑種の細胞遺伝学的特徴 |
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担当機関 | 埼玉農総研 |
研究期間 | 1990~2005 |
研究担当者 |
石坂宏 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 胚珠培養と葯培養によりCyclamen persicum (2n=4x=96)とC. graecum(2n=4x=84)の種間雑種(複二倍体と二ゲノム性半数体)が作出できる。両親と種間雑種の染色体観察から、C. graecumは同質四倍体であり、C. persicumとC. graecumは遠縁の関係にある。 |
キーワード | C. persicum、C. graecum、胚珠培養、葯培養、種間雑種、染色体、倍数性 |
背景・ねらい | 胚珠培養によりシクラメンの園芸品種(Cyclamen persicum)と他種との種間交雑が可能になり、作出された種間雑種が実用化されようとしている。シクラメン属植物は染色体の基本数に規則性がなく、種の倍数性及び種間の類縁性が疑問視されている。そこで、C. persicum(園芸品種)とC. graecum(病害抵抗性と耐寒性を持つ野性種)の種間雑種を作出し、染色体観察により両親と種間雑種の倍数性と類縁関係を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 四倍体園芸品種(C. persicum, 2n=4x=96)と野生種(C. graecum, 2n=4x=84)の交配では、雑種胚の崩壊により通常の方法では種子が得られないが、交配後35日の胚珠をMS+ショ糖(30g/l)+ココナットウォーター(10%)+ジェランガム(3g/l),pH5.8の培地に置床し、25℃・暗黒で培養することにより開花個体が得られる(表1)。 2. 複二倍体(2n=4x=90)の葯(一核期前期の小胞子を含む)をB5+ショ糖(90g/l)+NAA (1mg/l)+ジェランガム(3g/l),pH5.8の培地に置床し、25℃・暗黒で培養することにより不定胚経由の再分化個体が得られる(表2)。 3. C. persicum (2n=4x=96)とC. graecum (2n=4x=84)の交配で得られた開花個体の根端細胞染色体数は両親の半数の和に当たる2n=90である。また、開花個体の花粉母細胞では高頻度で二価染色体が形成され、花粉、種子ともに稔性がある(表3)。 4. 二倍体園芸品種(C.persicum, 2n=2x=48)の花粉母細胞では四価染色体は形成されないが、四倍体園芸品種(C. persicum, 2n=4x=96)及びC. graecum (2n=4x=84)では四価染色体が形成される(表3)。 5. 以上の結果から、C. graecum (2n=4x=84)はC. persicum(2n=4x=96)と同様に同質四倍体であると考えられるが、二倍体のC. graecum(2n=2x=42)はまだ発見されていない。また、表1に示した開花個体は異種の同質四倍体間の交配により得られた複二倍体と考えられる。 6. 複二倍体(2n=4x=90)の葯培養により得られた個体は、根端細胞で複二倍体の半数に当たる2n=45の染色体が観察されることから、二ゲノム性半数体と考えられる(表3)。 7. 二ゲノム性半数体の染色体対合頻度は低く、花粉、種子ともに不稔である(表3)。このことは、C. persicumとC. graecumのゲノムの相同性が低く、シクラメン属の中で両種は遠縁の関係にあることを示唆している。 |
成果の活用面・留意点 | 1. C. graecumは同質四倍体であることから、C. persicumとC. graecumの交配と胚珠培養により稔性のある複二倍体を得るためには、C. persicumは同質四倍体の園芸品種を選択しなければならない。 2. C. persicumの園芸品種には同質四倍体の他に二倍体があるため、両者を識別する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | シクラメン 耐寒性 病害抵抗性 品種 |