日本に発生する5種トスポウイルスのマルチPCR法による同時検出・同定

タイトル 日本に発生する5種トスポウイルスのマルチPCR法による同時検出・同定
担当機関 埼玉農総研
研究期間 2002~2004
研究担当者 宇賀博之
発行年度 2005
要約 全トスポウイルスゲノムの3'末端非翻訳領域に共通なディジェネレートプライマーとウイルス種特異的に結合する5種プライマーを混合したプライマーカクテルによる1回のRT-PCR反応で、日本に発生する5種類のトスポウイルスを同時に検出・同定できる。
キーワード トスポウイルス、ディジェネレートプライマー、マルチPCR、診断
背景・ねらい トスポウイルスは、感染作物の葉上にえそ斑紋や輪紋などの壊死斑点を発症させ、商品価値を著しく低下させる。これまで、日本で発生したトスポウイルスは5種類報告されている(平成17年4月現在、6種)。しかし、各トスポウイルスが感染した作物の病徴はいずれも酷似し、病徴経過観察によるウイルス種の識別は難しい。このため、感染ウイルス種の同定はエライザ法や特異的プライマーによるRT-PCR法が利用されているが、これらの方法はウイルス種ごとに実施するため時間を要する。そこで、データベースに登録されているトスポウイルスゲノムの遺伝子配列情報からプライマーカクテルを作製し、1回のRT-PCR反応で日本に発生する5種類のトスポウイルスを同時に検出・同定できるマルチPCR法を開発する。

成果の内容・特徴 1.
プライマー作製のためのトスポウイルスの遺伝子配列情報は、DDBJ等のデータベースを参考にする。本ウイルスS RNAゲノムの3'末端非翻訳領域の15塩基は共通性が高いことから、これに3個のグアニシン(G)を付加したディジェネレートプライマーを作製しRT-PCR反応時の下流プライマーとする。次に、PCR反応後に得られるDNAの断片長が5種ウイルス間で異なるように、S RNAゲノムの3'末端からの塩基距離が違う5種類のウイルス種特異的プライマーを作製し上流プライマーとする(表1)。
2.
ディジェネレートプライマーは2μM、5種類の種特異的プライマーは0.2μMの最終濃度となるようにプライマーカクテルを調整し、One Step RNA PCR Kit(AMV)(TAKARA社)のプロトコールに従ってRT-PCR反応を実施する。逆転写反応は、50℃30分、94℃2分、PCR反応は、94℃30秒、54℃30秒、72℃1分を35回繰り返し、最終伸長は72℃10分間とする。本法を用いると、スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)、トマト黄化えそウイルス(TSWV)、インパチェンスネクロティックスポットウイルス(INSV)、メロン黄化えそウイルス(MYSV)及びアイリスイエロースポットウイルス(IYSV)の単独感染植物から、それぞれ848bp、709bp、589bp、511bp及び459bpのDNA断片が増幅される(図1)。
3.
複数のトスポウイルスが重複感染した植物を人為的に作製し、本法を用いてそれらを検定すると、接種したウイルス由来のDNA断片が全て検出される(図2)。
4.
トスポウイルス自然感染植物を検定すると、単独感染株はむろん、重複感染株についても、病原ウイルス種の検出・同定が1回のRT-PCR反応でできる(図3)。

成果の活用面・留意点 1.
作成したプライマーセットは、データベースに登録された分離株の遺伝子配列情報を基礎としたものであるため、本邦未発生の別種トスポウイルスは検出できない。また、平成17年に新病害として報告されたCapsicum chlorosis virusには対応しない。
2.
本法は、TAKARA社のOne Step RNA PCR Kit(AMV)を使用した場合の設定条件であるため、異なる試薬を使用する場合には試薬ごとに反応条件を最適化する必要がある。
図表1 218181-1.jpg
図表2 218181-2.jpg
図表3 218181-3.jpg
図表4 218181-4.gif
カテゴリ アイリス インパチェンス データベース

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