タイトル | 酒造好適米新品種候補系統「北陸酒206号」 |
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担当機関 | (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 | 1996~2006 |
研究担当者 |
三浦清之 笹原英樹 後藤明俊 重宗明子 上原泰樹 太田久稔 小牧有三 清水博之 大槻 寛 福井清美 |
発行年度 | 2006 |
要約 | 「北陸酒206号」は寒冷地南部では晩生の早に属する粳種で、長稈、中間型の系統である。醸造時のアルコール収率および生成酒のアミノ酸度は「山田錦」並であり、やわらかさと深みのある酒質を示すことから、麹米および掛米としての利用が期待される。 |
キーワード | イネ、酒米、高度精米耐性、アミノ酸度、アルコール収率、醸造適性 |
背景・ねらい | 現在、酒造会社では、各社の個性を生かした製品開発の動きが活発化しており、新たな酒造好適米への関心が高まっている。酒造好適米として大吟醸酒等に用いられる「山田錦」は、寒冷地南部においては、熟期が遅く、栽培が困難である。このため、寒冷地南部でも安定した生産が可能な優れた醸造適性と収量性を併せ持つ酒造用品種を育成する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 「北陸酒206号」は、1996年北陸農業試験場(現中央農業総合研究センター・北陸研究センター)において、栽培特性と醸造適性の両立を目指して、酒米品種「山田錦」と「北陸174号」を交配した後代から育成された酒造用系統である。 2. 玄米千粒重は25g前後で、兵庫県産「山田錦」よりわずかに小さく、整粒歩合はほぼ「山田錦」並で、45%精米時の砕米率は、年次によって変動があるが、「山田錦」並かやや少なく、高度精米耐性がある(表1)。 3. 「山田錦」より、45%精米のタンパク質含量は0.5%程度高く、吸水速度はわずかに遅く、麹の力価はわずかに低い(表1)。 4. 醸造時のアルコール収率および生成酒のアミノ酸度は「山田錦」とほぼ同等である(表2)。 5. 「北陸酒206号」の生成酒は「味がしっかりし、やわらかさと深みがある」と評価され(原酒造株式会社)、「繊細できれい」な「五百万石」や「味の奥行きがあり、やわらかみの奥から味が徐々に広がる」と評価される「山田錦」とは異なることから、新たな商品開発が期待できる。 6. 「日本晴」より出穂期は6日、成熟期は8日ほど早く、育成地では“晩生の早”に属する。稈長は“やや長”で、草型は“中間型”であり、耐倒伏性は“やや弱”、千粒重は「日本晴」より重い。収量は「日本晴」並であり、掛米としても十分利用可能な収量性をもつと考えられる(表3)。 7. いもち病真性抵抗性遺伝子はPiaを持つと推定され、葉いもち、穂いもちともに圃場抵抗性は“中”である。穂発芽性は“やや難”、障害型耐冷性は“やや弱”である。縞葉枯病に対して罹病性である(表3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 寒冷地南部では「コシヒカリ」より刈取時期が遅いため、収穫作業が分散できる。 2. 栽培適応地域は北陸および関東以西の地域であるが、障害型耐冷性がやや弱いため、冷害の危険のある地域での栽培は避ける。 3. 耐倒伏性がやや弱いので、倒伏させない栽培を励行する。 4. 過度の施肥は倒伏を助長するうえ、玄米のタンパク質含量を増加させるため避ける。 5. 胴割れを防ぐため、適期刈り取りに努め、乾燥調製に留意する。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | いもち病 乾燥 縞葉枯病 酒造好適米 新品種 施肥 抵抗性 抵抗性遺伝子 凍害 品種 |