タイトル |
極多収のインド型水稲新品種「北陸193号」 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
1992~2008 |
研究担当者 |
三浦清之
笹原英樹
後藤明俊
重宗明子
上原泰樹
小林 陽
太田久稔
清水博之
福井清美
大槻 寛
小牧有三
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発行年度 |
2008 |
要約 |
水稲新品種「北陸193号」は寒冷地南部での出穂期が晩生の晩に属する粳種である。玄米収量が多く、バイオエタノール用、飼料用等の新規需要米としての利用が期待できる。
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キーワード |
イネ、バイオエタノール、飼料米、新規需要米、多収、北陸193号
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背景・ねらい |
地球温暖化および穀物価格の高騰への対策として、我が国の貴重な食料生産基盤である水田を活用し、バイオエタノール、飼料、米粉用などの新規需要米の生産を本格化させる必要がある。低コスト生産が必要な新規需要米に対応した極多収水稲品種が望まれている。
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成果の内容・特徴 |
- 「北陸193号」は、収量性の向上を目標として、韓国品種から育成したインド型多収系統「上344」と中国のインド型多収品種「桂朝2号」の交配後代から育成された極多収品種である。
- 出穂期は「日本晴」より1日程遅く、成熟期は7日程遅い育成地では"晩生の晩"に属する。耐倒伏性は「日本晴」より明らかに強く、"極強"である。収量性は「日本晴」より2割程増収し、極多収である。縞葉枯病には"抵抗性"である(表1)。
- 新潟県三条市における3ヵ年の現地実証試験では、700~900kg/10aの粗玄米収量を示した(表2)。2008年に、新潟県下8農協管内の全栽培面積301ha、総農家戸数344戸の規模で栽培実証試験を行った結果、800kg/10a程度の粗玄米収量を収めた農家が最も多く、1000kg/10a以上の粗玄米収量を収めた農家数は15戸で、最高事例は1094kg/10aであり、総栽培面積から算出した平均粗玄米収量は781kg/10aであった(図1)。「北陸193号」は、農家段階においても、極めて高い多収性を示した。
- 「北陸193号」は種子休眠が強く、秋の収穫から翌春の播種時までの保存期間中に休眠が打破されず発芽が劣る欠点がある。種子の水分含量を15%程度に調整後、60℃、乾燥条件で4~7日間の休眠打破処理より改善が図られる(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 極多収であり、バイオエタノール、飼料等の新規需要米としての利用が期待できる。
- 脱粒性が"やや難"なので、刈り遅れると脱粒が顕著となる恐れがあるため適期刈り取りに努める。
- メイチュウおよびイネツトムシの害を受けやすいので、適宜防除に努める。
- いもち病真性抵抗性遺伝子Pik, Pita-2, Pib, Piz, Piz-tのうち複数を持つ可能性があり、さらに加えて、未知の真性抵抗性遺伝子を持つ可能性も考えられるため、現在のところ、いもち病の発病は認められないが、いもち病菌の新レースの出現による発病の可能性があるため、いもち病の防除を励行する。
- 幼苗期に低温により退色がみられるため、育苗時の温度管理に留意する。
- 穂数が少ないので、分けつ数を確保するために、一般食用品種よりも増肥する必要がある。
- 湛水条件下での苗立ちが悪いため、湛水直播栽培は避ける。
- 出穂が遅れることによる低温下での登熟不良により減収する恐れがあるため、特に、寒冷地南部では遅植えや山間高冷地での栽培を避ける。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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図表7 |
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図表8 |
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カテゴリ |
病害虫
育苗
いもち病
温度管理
乾燥
直播栽培
縞葉枯病
飼料用作物
新品種
水田
水稲
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防除
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