タイトル | ユズ果皮中に含まれる植物生長阻害成分 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター |
研究期間 | 2000~2002 |
研究担当者 |
加藤尚(香川大) 吉川省子 吉田正則 山村庄亮(慶応大) 清水徳朗 村上敏文 藤原伸介 |
発行年度 | 2002 |
要約 | ユズ果皮の水溶性中性画分にはアブシジン酸のb-D-グルコピラノシルエステルが含まれ、メヒシバ、ノゲシ、シロザなどの雑草やレタス、トマト、セルリー、ズッキーニなど多種植物の発芽や生長を阻害する。 |
キーワード | ユズ果皮、雑草制御、生長阻害、アブシジン酸-b-D-グルコピラノシル |
背景・ねらい | 近年、食品加工の工程で排出される残渣の廃棄処理が大きな問題となっている。カンキツ果実を加工する過程で大量に産出される果皮や果実のしぼり滓もその例外ではなく、処理コストの関係で大部分は産業廃棄物として処理されている。また、隔年結果性のあるカンキツは、豊作年に生産調整を目的とした摘果が行われるため、相当量の摘果果実が廃棄される。本研究は、有機資源の循環再利用技術の一環として、カンキツ果皮中に含まれる有用生理機能成分の探索を目的に行った。 |
成果の内容・特徴 | 1. カンキツ類の果皮から得られるアルコール抽出液にはレタス種子の発芽を阻害する生理活性成分が含まれる。中でも、ユズの果皮抽出液は非常に強い発芽阻害作用を示す(図1)。阻害活性は主としてユズの果皮に存在し、種子やじょうのうの活性は低い。ユズ果皮の生理活性は果実の成熟過程で変化し、11月に採果された果実に強い阻害活性が存在する。 2. レタス種子に対する作用は致死的ではなく、ユズ果皮抽出液を含まないろ紙に種子を移すと発芽を再開する。 3. ユズ果皮抽出液は、レタスだけでなく、トマト、セルリー、ズッキーニなど多種植物の種子発芽を強く阻害する。しかし、キュウリやカボチャ種子への作用は非常に弱い。 4. 土壌に添加したユズ果皮の乾燥粉体は、雑草のシロザ、ノゲシ、メヒシバの生長を阻害するが、スズメノテッポウに対しては阻害作用がなく、ユズ果皮に対する感受性は植物種によって大きく異なる(図2、図3)。 5. 最も強い生長阻害活性はユズ果皮の水溶性中性画分に存在し、その活性の本体はアブシジン酸のb-D-グルコピラノシルエステルである(図4)。本成分は、11月に採果されたユズの果皮1Kg(乾燥重)当たり約130mg含まれる。また、レタスの幼根及び胚軸の生長に対する本成分の50%阻害値は各々1.4、2.3μMである。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 食品加工の工程で排出されるユズ果皮の残渣は、効率的な抽出・精製法が確立されれば植物生長調節剤の原料として期待できる。 2. 耐寒性、耐湿性、耐乾燥性などユズに特徴的な生理特性の解明や高等植物一般におけるアブシジン酸の代謝研究に大きく寄与するものと考えられる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
図表4 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 加工 かぼちゃ 乾燥 きゅうり コスト 雑草 ズッキーニ セルリー 耐寒性 耐湿性 トマト ゆず レタス その他のかんきつ |