超音波皮下脂肪測定値を活用した繁殖牛の栄養度と繁殖成績の推定

タイトル 超音波皮下脂肪測定値を活用した繁殖牛の栄養度と繁殖成績の推定
担当機関 愛媛畜試
研究期間 2001~2003
研究担当者 岡田栄一
山本哲(愛媛畜試)
新居康生(徳島畜研)
谷原礼論(香川畜試)
日浦千尋(高知畜試)
檜垣邦昭
発行年度 2004
要約 分娩前後の皮下脂肪蓄積量が高い部位は臀部であり、分娩前の臀部皮下脂肪蓄積量が26~35mmの範囲で、分娩後の受胎性が高まる。分娩前の臀部皮下脂肪蓄積量と栄養度判定を組み合わせた繁殖栄養簡易早見表を活用し、皮下脂肪蓄積量をコントロールすることによって、繁殖成績の向上を図ることが出来る。
キーワード 肉用繁殖牛、超音波診断装置、皮下脂肪厚、繁殖性
背景・ねらい 肉用繁殖経営においては、繁殖牛の高い子牛生産率と連産性が強く求められている。しかし、県下の平均分娩間隔は、431日と長く、目標とする1年1産という効率的な子牛生産には程遠い状況にある。分娩間隔を短縮し、子牛生産率を向上させるためには、分娩前後の飼養管理や栄養状態を積極的に改善することが重要である。これまで、繁殖牛の栄養度判定は、人間の感覚による視診触診の判定法だけで、的確で客観的な栄養状態を判断する手法は確立されていない。そこで、超音波診断装置を用いて、繁殖雌牛の皮下脂肪蓄積量と分娩後の受胎日数との関係を明らかにして、繁殖雌牛としての適切な栄養状態を検討し、効率的な繁殖管理技術に貢献する。
成果の内容・特徴 繁殖牛160頭を用い、分娩予定4~2週前、分娩3~4週後、分娩12~13週後に超音波診断装置(スーパーアイミートSSD900型)で、き甲部、第6-7肋間上部(僧帽筋上)、同下部(広背筋上)、第12-13肋間部、尾根部、臀部の皮下脂肪蓄積量を測定し繁殖性との関連を検討する。
  1. 分娩前後6部位の皮下脂肪蓄積量は、部位により差が認められるが、き甲部<第6-7肋間上部<第12-13肋間部<第6-7肋間下部<尾根部<臀部の順で、腰角を境に脂肪蓄積量に大きな違いがあり、後躯への脂肪蓄積量が多い。臀部は皮下脂肪蓄積量が最も高いが(分娩前29.0mm)変動係数は最も小さく、測定し易い部位である。また、分娩後皮下脂肪蓄積量は分娩前に比較して有意に減少する(表1)。
  2. 分娩前の産次別皮下脂肪蓄積量は、き甲部、第6-7肋間上部では産次間に差は認められないが、臀部及び尾根部では産次が高くなるほど増加傾向を示す。また、8産目が最も皮下脂肪が厚く、第6-7肋間上部、下部を除く4項目が最高値を示す(表2)。
  3. 分娩後受胎した154頭の分娩前臀部皮下脂肪蓄積量を5区分し、各測定値レベルでの受胎日数(平均受胎日数75日)に対する効果日数は各間で有意な差が認められる。最も良好な受胎日数を得られる分娩前の臀部皮下脂肪蓄積量の範囲は26~35mmで、この範囲であれば平均より11日早い。反対に、15mm以下や46mm以上では受胎日数は長くなる。このことから、分娩前の臀部皮下脂肪蓄積量が26~35mmの範囲が分娩後の受胎性を高めるための適切な栄養状態と考える。また、臀部皮下脂肪蓄積量と全国和牛登録協会が示す臀部栄養度判定をリンクさせた結果、分娩前の臀部栄養度が6~7であれば分娩後の受胎性は高まる(表3)。

成果の活用面・留意点
  1. 適用範囲は、黒毛和種とする。
  2. 安価で的確に皮下脂肪蓄積量を判定出来る簡易超音波診断装置の検討が必要である。
  3. 現在、生産現場で活用できる超音波診断装置は少ないため、分娩前の臀部皮下脂肪蓄積量と栄養度判定を組み合わせた繁殖栄養簡易早見表に基づき、皮下脂肪蓄積量をコントロールすることによって、繁殖成績の向上を図ることが出来る。

図表1 219944-1.jpg
図表2 219944-2.jpg
図表3 219944-3.jpg
カテゴリ 管理技術 経営管理 飼育技術 繁殖性改善

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