ウシ体外受精由来胚の性別とクローディン16欠損症の遺伝情報診断

タイトル ウシ体外受精由来胚の性別とクローディン16欠損症の遺伝情報診断
担当機関 兵庫農総セ
研究期間 2000~2005
研究担当者 岩木史之
冨永敬一郎
発行年度 2005
要約 ウシ体外受精7日目胚盤胞の1/4~1/3を切断後、サンプルを直ちに熱処理して抽出したDNAをPEP-PCR後、速やかクローディン16欠損症(CL-16欠損症)診断に供し、並行して性別を判定することにより、2種類の遺伝情報を診断でき、GL-Tipガラス化法による超低温保存・移植により子牛を生産できる。
キーワード ウシ、体外受精胚、胚盤胞、性判定、CL-16欠損症、ガラス化
背景・ねらい 血液DNAを用いたウシ腎尿細管形成不全症(CL-16欠損症)の診断技術が報告された(Hiranoら、2000)が、CL-16欠損症の変異DNA部位は不安定なため、抽出方法や保管状況によっては診断の再現性が確保できないことが知られている。また、検出感度の高い診断方法が開発された(Hirayamaら、2005)が、PEP-PCR後に得られたDNAを用いるとネガティブバンドも検出されるため、利用できない。そこで、ウシ体外受精7日目胚サンプルを用いて、Primer Extension Preamplification (PEP) - PCR法(冨永ら、2003)を利用するために、DNA抽出、処理方法を検討し、再現性の高い診断法を確立する。さらに、性別とCL-16欠損症の両方を診断し、ゲル・ローディング・チップ(GL-Tip)ガラス化保存法(Tominaga and Hamada, 2001)を用いて超低温保存した胚を移植して、受胎能と判定の正確さをみる。
成果の内容・特徴
  1. CL-16欠損症をヘテロで保因する雄牛の精液と食肉センターで採取した卵巣由来卵子(フリー)とを体外受精し,高品質の7日目胚盤胞を試験に供する。
  2. 切断刃で胚の1/4~1/3(細胞数10~20個)を切断したサンプルを洗浄後、直ちに10μl水に入れたサンプルを95℃5分間熱処理してDNAを抽出し、すぐに15merランダムプライマー(OPERON)を用いたPEP-PCR法によりDNAを増幅する。
  3. PEP-PCRで得られたDNAを速やかにCL-16欠損症診断(Hiranoら、2000)に供する。並行して、性別をXYセレクター(伊藤ハム)で判定する。CL-16欠損症の診断では、欠損部分を挟んだプライマー(DA:722bp)とその部分を含まないプライマー(DN:375bp)を用いてPCRで増幅し、保因(ヘテロ)の有無を調べる(図1)。
  4. 2種類の遺伝子判定は97.6%(80/82)の胚で可能であり、CL-16保因:フリー及び雌雄比率とも39:41となり、ほぼ1:1である (表)。
  5. 胚の受胎能と判定の正確さをみるために、経腟採卵で採取したCL-16フリー卵子を成熟培養後、ヘテロ種雄牛精子と体外受精し、雌でCL-16フリーと判定した1個の7日目胚盤胞をGL-Tip法でガラス化し、7日間液体窒素で保存後移植した結果、判定どおりの雌でCL-16フリーの子牛(体重22.4Kg,妊娠期間283日)を生産した(図2)。
成果の活用面・留意点
  1. 2種類の遺伝情報を付加した優良牛の胚を有効利用できる。
  2. PEP-PCRや遺伝子診断技術は高度な複合技術であるため、個々の技術を完全に習得する必要がある。
  3. 一連の操作を速やかに行わないと、欠損部のバンドの検出が不安定になる。
図表1 220198-1.jpg
図表2 220198-2.jpg
図表3 220198-3.jpg
カテゴリ 診断技術

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