タイトル |
水稲-イグサ二毛作地帯における窒素フロー |
担当機関 |
九州農業試験場 |
研究期間 |
1997~1998 |
研究担当者 |
久保田富次郎
宮本輝仁
小林久(茨城大学)
樽屋啓之
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発行年度 |
1998 |
要約 |
水稲-イグサ二毛作を主体とする流域を対象として、水系を中心とした窒素フローを明らかにした。施肥窒素の見かけの流出率は、流域の差引排出負荷量ベースで検討すると8%となった。イグサへの施肥期には窒素の流出が生じているが、施肥期以外については窒素について浄化機能が働いていることが判明した。九州農業試験場 生産環境部 資源評価研究室
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背景・ねらい |
有明海・八代海沿岸の低平地水田地帯では、温暖な気候を利用して二毛作を中心とする多様な農業が営まれている。その中で八代平野を中心とする水稲-イグサ二毛作体系では、窒素施肥量が50kgN/10aを越え、肥料成分の流出による閉鎖性水域の富栄養化等の問題が懸念されている。そこで、低平地を中心とした農村流域を対象として、表流水の移動に伴った水系を中心とする窒素成分のフローについて検討を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 対象は、八代海沿岸低平地に位置する20平方キロメートルの流域である。流域への年間総窒素負荷量は737tであり、このうち全施肥窒素量は612t(30.6kgN/10a(流域平均値))である。水稲及びイグサへの施肥量は532tである(図1)。
- 窒素フローの算定において、雨水、農業用水、流出水等の水量・水質は実測値を用いた。また、施肥量や作物吸収量、生活系の排出負荷量については、文献値、聞き取り調査、航空写真判読等により推定した。
- 年間の窒素フローを見ると、流域への窒素負荷量のうち海域及び干拓地へ流出するものが24%、作物に吸収されるものが58%、不明分が18%あった。不明分については、他の植生による吸収や脱窒、土壌や調整池底質への蓄積等のフローが考えられる。また、地下を経由した流域外への窒素フローは無視できる。
- 流域における差引排出負荷量を(1)式で定義すると、本流域における差引排出負荷量は、51t(2.6kgN/10a(流域平均値))となる。また、全施肥量に対する差引排出負荷量の割合で定義する見かけの流出率は8%である。
- (流域の差引排出負荷)=(流出負荷)-(自然系流入負荷)-(生活・産業系負荷)…(1)
- 窒素フローの季節変化を見ると、流域からの窒素流出はイグサへの施肥に対応している(図2)。特にイグサ追肥期に年間の窒素流出の多くが発生していることが判明した。また、多雨時期の流出のピークも見られた。施肥期以外では、流域は、窒素成分について浄化機能が働いている。
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成果の活用面・留意点 |
- 流域からの負荷流出削減には、イグサの追肥期後半(5月~6月上旬)に生じる肥料成分の圃場からの流出削減対策が効果的である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
肥料
いぐさ
水田
水稲
施肥
二毛作
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