タイトル |
露地栽培ブドウ`巨峰'の黒とう病、枝膨病に対する萌芽直前〜生育初期における効率的防除体系と萌芽直前散布の重要性 |
担当機関 |
佐賀県果樹試験場 |
研究期間 |
1998~2000 |
研究担当者 |
井手洋一
田代暢哉
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発行年度 |
2000 |
要約 |
露地栽培ブドウ`巨峰'において、黒とう病、枝膨病の両病害に対して効果の高い薬剤を萌芽直前、展葉3~5枚時、展葉8~10枚時に散布することで、従来のベンズイミダゾール系薬剤の萌芽直前1回の高濃度散布に比べて低コストで両病害の発生を実用上問題ない程度まで抑えることができる。この場合、黒とう病に対して萌芽直前散布は必須である。佐賀県果樹試験場・病害虫研究室
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背景・ねらい |
露地栽培ブドウ`巨峰'の萌芽直前防除としてベンズイミダゾール系薬剤の高濃度散布が行われてきたが、経費がかさむこと、同系薬剤耐性黒とう病菌の発生を助長すること、さらに環境への負荷の問題も憂慮されることから、代替防除技術の確立が望まれる。そこで、展葉後の防除において黒とう病、枝膨病を対象に用いられている安価な殺菌剤を萌芽直前にも散布し、経費低減と両病害の同時防除を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 表1に示すジチアノンフロアブル、有機銅フロアブルのような黒とう病、枝膨病に対して効果の高い保護殺菌剤を用いる。その他にジチアノン・チオファネートメチル水和剤、フルアジナムSC等も有効である(データ略)。
- 枝膨病は展葉後の4月下旬以降から感染が始まるため、展葉3~5枚時以降の散布で十分に対応できる(表2)。しかし、黒とう病は萌芽直後から感染が始まるため萌芽直前の防除が必須である(表1)。よって、萌芽直前から薬剤散布を開始し、さらに展葉3~5枚時、展葉8~10枚時の時期に再度薬剤散布を行うことで、5月下旬まで黒とう病、枝膨病の両病害を同時に効率よく防除できる。
- ジチアノンフロアブル1,000倍、有機銅フロアブル600倍を萌芽直前から展葉初期にかけて散布すると、黒とう病に対してはベンズイミダゾール系薬剤の高濃度散布と同等以上のすぐれた防除効果が得られ(表1)、枝膨病に対してはやや劣るものの実用上十分な防除効果が得られる(表2)。
- 10aあたりの散布量を300リットルとすると、ベンズイミダゾール系剤の高濃度散布(炭酸カルシウム枝幹塗布剤10倍加用チオファネートメチル水和剤50倍)では萌芽直前1回散布でも約56,000円/10aの経費を要する。しかし、ジチアノンフロアブル1,000倍では萌芽直前~生育初期に3回の散布を行っても約3,500円/10a、有機銅フロアブル600倍では約5,000円/10aであり、従来のベンズイミダゾール系薬剤の高濃度散布に対して労力を考慮しても大幅に経費を節減できる(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- 成木では少なくとも300リットル/10aの薬液を使用し、樹全体にむらなくかかるように散布する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
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害虫
低コスト
ぶどう
防除
薬剤
薬剤耐性
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