肉牛のロース芯、肝臓、心臓中の機能性成分と遊離アミノ酸含量

• 担当機関: （独）農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
• 研究期間: 2006～2010
• 発行年度: 2008
• 要約: カルノシン、カルニチン、クレアチンの含有量はロースで、タウリン、オルニチン、ナイアシンは肝臓で、ユビキノンは心臓で、それぞれ顕著に高い値を示すが、内臓（特に心臓）における含有量に対する飼養条件の影響は小さい。
• キーワード: 牛肉、肝臓、心臓、機能性成分、遊離アミノ酸

背景・ねらい

近年、食品に対する安心感へのこだわりから、放牧飼養や牧乾草多給肥育による牛肉生産が注目されている。このような肥育法では内臓廃棄率が低いので、差別化を目的とした内臓の食材としての販売が検討され、同時に牛肉中機能性成分含量が高いことから、内臓中の成分含量における特色が期待されている。そこで、各種飼養条件で肥育された肉牛について、ロース芯だけでなく、肝臓や心臓の各種機能性成分含量および遊離アミノ酸含量を調査する。

成果の内容・特徴

黒毛和種去勢牛を、1>慣行法肥育、2>オーツヘイによる粗飼料多給肥育、3>放牧後にトウモロコシサイレージ主体の仕上げ肥育、4>育成期からの周年放牧で、それぞれ飼養し、各群4頭計16頭のロース芯、心臓、肝臓の各種成分含量を調査する。各群の出荷月齢は28.0、27.4、32.5、27.4ヵ月齢、出荷体重は723、700、591、518kgである。

1. 機能性成分の含有量は体組織における特徴が認められ、カルノシン、カルニチン、クレアチンの含有量はロースで、タウリン、オルニチン、ナイアシンは肝臓で、ユビキノンは心臓で、それぞれ顕著に高い値を示す（表1）。
2. ロース芯におけるカルノシン含量は、3>放牧肥育や4>周年放牧で高くなる（表2）。
3. カルニチン含量において、ロース芯で高い値を示す場合、その合成部位である肝臓では逆に低い値となる（表2）。
4. 筋肉中のタウリン含量は高エネルギー摂取で高くなることが知られているが、ロースと肝臓において、1>慣行法が高い値となる（表2）。
5. ロース芯におけるナイアシン含量は、4>周年放牧で高く、次いで3>放牧肥育が高くなる。肝臓中の含有量は高いが、飼養条件の影響は認められない（表2）。
6. ユビキノン含量は心臓中に多く含有するが、飼養条件の影響は認められない。肝臓では、4>周年放牧で高い値となる（表2）。
7. 肝臓と心臓の遊離アミノ酸含量は、屠畜当日の採材にもかかわらず、屠畜5日目採材のロース芯と比較して高く、特にグルタミン酸とグリシンは肝臓で、グルタミンとアラニンは心臓で高い値を示す。ただし、内臓の遊離アミノ酸含量に対する飼養条件の影響はほとんど認められない（表3）。

成果の活用面・留意点

1. 牛肉だけでなく、牛の肝臓や心臓が栄養価の高い食品として評価され、内臓が食材として注目されるような、健全な肥育技術の普及に貢献する。
2. 内臓を用いた料理・加工の際に、その呈味成分含量が参考資料となる。
3. 放牧や牧乾草多給は、良好な栄養条件と飼養環境を実現していることが前提である。

• カテゴリ: 加工 機能性成分 出荷調整 トウモロコシサイレージ 肉牛