Clostridium thermocellumが生成するセルロソーム(セルラーゼ複合体)の解離法

タイトル Clostridium thermocellumが生成するセルロソーム(セルラーゼ複合体)の解離法
研究期間 1997~1997
研究担当者 森 隆
徳安 健
濱松潮香
発行年度 1997
要約 好熱嫌気性細菌Clostridium thermocellumが生成するセルロソームは非常に安定で,SDS存在下で加熱処理する以外に解離法がなかったが,未変性状態で解離する方法を開発した。解離したセルロソームは透析により容易に再構成され,活性を回復した。
背景・ねらい  
好熱嫌気性細菌Clostridium thermocellumは強力な結晶性セルロース分解活性を有するセルロソームと呼ばれるセルラーゼ複合体(分子量:200万~350万)を生成する。
セルロソームは30~45個のサブユニットが規則的に配置された構造を持ち(図1),
高度に進化した酵素の形態と考えられる。セルロソームは非常に安定なため,これまでSDS存在下で加熱変性処理する以外に解離法がなかった。また,サブユニットをコー
ドする遺伝子をクローニングし大腸菌に生成させた組み替え蛋白質を用いても,活性を持った複合体を再構成することができず,糖鎖等のポリペプチド以外の成分の関与が推定されている。そこで,自然の状態でのサブユニットの単離を目的として,変性操作を伴わない解離法を検討した。
成果の内容・特徴
  1. 両性界面活性剤である3-〔(3-コーラミドプロピル)ジメチルアンモニオ〕-1-プロパ
    ンスルホネート(CHAPS),金属キレート試薬であるエチレンジアミン四酢酸
    (EDTA),還元剤であるヂチオスレイトール(DTT)が共存する条件下で,
    セルロソームが解離することを見いだした(図2)。 
  2. 最適の解離条件は,EDTA濃度16mM,CHAPS濃度230mM,DTT濃度
    20mM,pH7.0,45℃だった。20時間の処理により,セルロソームの92
    %が解離した(図2上下)。この時,結晶性セルロース分解活性は完全に消失したが,
    カルボキシメチルセルロース分解活性(CMCase)は1.9倍に上昇した。 
  3. 解離処理したセルロソームは,透析により,結晶性セルロース分解活性を解離前と同程度に回復した。この時,少なくとも3種類の複合体が生成した(図3)。 
  4. 解離後,各種のクロマトグラフィーにより,4種のサブユニットを単離,精製した。
成果の活用面・留意点  
本解離法を用いると,セルロソームのサブユニットを自然に近い状態で単離することが可能であり,サブユニット間の相互作用を調べること等により,複合体構造の形成原理を明らかにできるものと期待される。
図表1 224490-1.gif
図表2 224490-2.gif
図表3 224490-3.gif
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