タイトル |
暖地型イネ科牧野草に発生したミイラ穂病とそのエンドファイトとしての特性 |
担当機関 |
草地試験場 |
研究期間 |
1998~1998 |
研究担当者 |
河野勝行(国際農研)
吉松慎一
月星隆雄(農環研)
高橋敬一(国際農研)
小林真
上垣隆一
島貫忠幸
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発行年度 |
1998 |
要約 |
バミューダグラス,パンゴラグラスなど16種の暖地型イネ科牧野草にミイラ穂病(新称)の発生を確認し,病原菌をEphelis sp.と同定した。本病菌はエンドファイトとして宿主植物に全身感染し,宿主に耐虫性を付与する。
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背景・ねらい |
沖縄県および栃木県で発生した暖地型イネ科牧野草のミイラ穂病は、わが国では発生記録がないため、新病害として病徴の記載および病原菌の分類・同定を行った。また、本病菌はエンドファイトとして全身感染するため,感染に伴う宿主植物への有用機能の付与について明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 発生状況および病徴
1993年に栃木県西那須野町でスズメノヒエの穂全体が白色~灰色の子座で被われ、枝梗が相互に接着された状態でミイラ化する病害が発生した(図1)。子座表面には灰黒色で大きさ1-2mmの菌核様の組織を形成する。この病害は夏から冬にかけて散発し,葉身表面にも白色の菌叢が葉脈に沿ってすじ状に形成される。1996年以降は沖縄県石垣市および今帰仁村でバミューダグラス,パラグラス等でも認められ,発生植物は12属16種に及んだ(表1)。本病はいずれの植物についてもわが国で未報告であり,病名をミイラ穂病(新称)とする。
- 病原菌の形態および宿主内での感染状態
子座上に形成される分生子は分生子柄上に車座状に形成され,無色,針状で,大きさ平均17.8×0.9μmであることから,病原菌はEphelis sp.と同定した。また,スズメノヒエの罹病組織を凍結割断し,SEM観察を行った結果,罹病個体の地際部稈内の柔細胞および表皮細胞内,また無病徴の葉身および葉鞘組織内にも分生子が存在し,また,発病株の刈取り後の再生茎でも病徴が再現されることから,本菌がエンドファイトとして全身感染することが明らかになった。
- 宿主植物への耐虫性の付与
本菌に感染したスズメノヒエでは非感染植物(感染スズメノヒエをトリホリン系浸透性殺菌剤で無病化したもの)に比べて,イナゴ、ドクガ類による摂食程度が低下する(図2)。また,パンゴラグラスではアワヨトウおよびマダラバッタが非感染植物をより好んで摂食する(高橋ら 1998)。従って,本病菌の感染により宿主植物に耐虫性が付与された。
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成果の活用面・留意点 |
- バミューダグラス,日本シバなど暖地の芝地で利用価値の高い草種に本菌を導入する生物防除により,殺虫剤等の使用を低減できる可能性がある。
- 本菌の感染方法や家畜への毒性が不明のため、発病株の取り扱いには注意が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
病害虫
あわ
ひえ
防除
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