FACE(開放系大気CO2増加)圃場では米収量が増え,タンパク含量が減る

タイトル FACE(開放系大気CO2増加)圃場では米収量が増え,タンパク含量が減る
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 1996~2002
研究担当者 マーク
リーフリング(科学技術振興事業団)
岡田益己(農業技術研究機構)
吉本真由美
金 漢龍(科学技術振興事業団)
三浦 周(現北海道立上川農業試験場)
寺尾富夫(農業技術研究機構)
小林和彦
発行年度 2002
要約 イネでは世界初のFACE(開放系大気CO2増加)実験を,岩手県雫石町の農家水田で3年間実施したところ,CO2増加でイネの生長が促進されモミ数が増える結果,米収量が増加した。窒素肥料を標準量よりも減らすとCO2増加による米収量の増加率は低下したが,逆に標準量以上に窒素を施用しても収量増加率は高まらなかった。CO2増加はまた,白米のタンパク含量を低下させた。
背景・ねらい 大気CO2濃度は上昇を続け,今世紀後半には550ppm(産業革命以前の2倍)に達するとみられる。温室やチャンバーを用いた従来の実験結果から,高CO2濃度下では光合成速度が高まり水利用効率も上昇するため,農作物の生長と収量は増加すると予想される。しかし,従来の実験ではチャンバー内の環境が現実のほ場とは異なるため,高CO2濃度に対する植物の応答も異なる可能性が高い。本研究は,イネを対象とした世界最初のFACE(開放系大気CO2増加)実験により,実際の農家水田におけるイネの生長と収量に及ぼすCO2濃度上昇の影響を明らかにすることを目的とする。
成果の内容・特徴
  1. 岩手県雫石町の農家水田で, 1998~2000年の3年間, CO2濃度2水準(外気,外気+200~250 ppm)×窒素肥料3水準(多窒素,標準窒素,少窒素)×4反復で実験を行い(図1),水稲(品種:あきたこまち)の生長,収量,品質を調べた。高CO2濃度下では水稲の乾物生長が促進され,収穫時の全乾物重は,高CO2濃度のほうが11~13%多かった。米収量は,多窒素と標準窒素では高CO2濃度により約15%増えたが,少窒素では7%の増収に止まった(図2)。高CO2濃度による増収は,面積当たりのモミ数が増加したためだったが(図2),それには幼穂形成期までの窒素吸収量が増えたことが関係していた。稔実率やモミ千粒重はCO2増加の影響を受けなかったが,収穫係数(穂重/全重)は高CO2濃度により2~3%低下した。
  2. 高CO2濃度は,どの窒素施肥量でも白米のタンパク含量を6~9 g kg-1 (比率では7~12%)低下させた(図2)。タンパク含量が低いと食味が向上することが知られているので,食味試験を行った結果,高CO2濃度で食味が向上する傾向を認めたが,違いは大きくなかった。
  3. FACE実験の結果を,従来のフィールド・チャンバー実験の結果と比較したところ,CO2増加による米収量の増加は,施肥窒素量が少ないと窒素量の増加につれて高まるが,その効果は徐々に小さくなることが分かった(図3)。フロリダ大学や国際イネ研究所(IRRI)でのフィールド・チャンバー実験で,FACE実験よりも高い収量増加率となったのは,施肥窒素量が多かったためと考えられ,窒素量の効果を考慮すれば,FACE実験の結果は従来の実験結果とほぼ一致した。米品質については,チャンバー実験で玄米中窒素濃度の低下が報告されており,FACE実験の結果はそれと一致した。このように,従来のチャンバー実験で見られたCO2濃度上昇による米収量増加とタンパク含量の低下が,実際の農家水田でも起こることが,FACE実験で確かめられた。
成果の活用面・留意点
  1. イネ生長モデルの検証と改良に本成果を活用すれば,将来の米生産性の予測精度向上に役立つ。
  2. CO2濃度上昇による米収量の増加が,窒素施肥量に依存するメカニズムを解明すれば,将来の高CO2濃度環境により良く適応した品種や栽培法の開発につながる可能性がある。
図表1 225344-1.png
図表2 225344-2.png
図表3 225344-3.png
カテゴリ 肥料 水田 水稲 施肥 品種 良食味

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