タイトル |
玄米のカドミウム濃度に係わる遺伝子座の検索 |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
2003~2005 |
研究担当者 |
阿江教治(神戸大農)
阿部薫
杉山恵
石川覚
村上政治
矢野昌裕(生物研)
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発行年度 |
2004 |
要約 |
イネの染色体置換系統群を利用して,玄米のカドミウム濃度に係わる量的形質遺伝子座を検索した結果,この遺伝子座は,第3,6,8染色体上に存在することが明らかとなった。
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背景・ねらい |
日本人の日常食から摂取されるカドミウム(Cd)の中で,コメ由来のCdは全摂取量の約半分を占めるため,早急にコメのCd濃度を減らすことが求められている。玄米Cd濃度の低い品種の開発は,恒久的な低減技術として有効であると考えられるが,玄米のCd濃度を制御する量的形質遺伝子座の検索はこれまで行われていない。そこで,イネの染色体置換系統群を利用して,玄米のCd濃度に係わる遺伝子座の同定を試み,Cd濃度の低い品種を効率的に作出するための有益な情報を提供する。
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成果の内容・特徴 |
- 遺伝的背景が「コシヒカリ」で,インド型品種「カサラス」の染色体断片が各々1カ所のみ大きく置換された39系統群(農業生物資源研究所で作出)を材料とし,Cd汚染土壌(灰色低地土,0.1 モル/L HCl抽出Cd濃度1.8 mg kg-1)を充填した1/5000aワグネルポット(4連)で栽培する。玄米Cd濃度の系統間差異を明確にするために,栽培はCdの吸収されやすい畑条件(圃場容水量の60%)で行う。
- 玄米Cd濃度は,第3(2系統),第4(1系統),第8(2系統),第12(2系統)染色体が部分的に置換された系統でコシヒカリよりも有意に低い。一方,第5(1系統)および第6染色体(3系統)が部分的に置換された系統で有意に高い(図1)。
- 染色体置換系統群の玄米Cd濃度と,その他16の量的形質(栄養的や形態的な形質)の表現型上の相関を調査したところ,玄米Cd濃度は7つの形質と相関がある(表1)。
- 玄米Cd濃度の系統間差異と系統の図式遺伝子型の比較から,玄米Cd濃度に係わる遺伝子座は第3,6,8染色体上に位置づけられる(図2)。この遺伝子座は,表現型上で相関があった数種の形質に係わる遺伝子座と一致する。
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成果の活用面・留意点 |
- 遺伝的背景がコシヒカリである染色体置換系統群を育種材料に利用することで,玄米Cd濃度が低いコシヒカリの育成に必要な期間を大幅に短縮できる。
- カサラスの第6染色体上には,玄米Cd濃度を高くする形質に関係する遺伝子座も存在するので,同染色体上にある有用遺伝子を利用した育種を行う際は,この領域を取り込まないようにする。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
育種
品種
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