関東地方でみられるタンポポの4割は単一のクローンである

タイトル 関東地方でみられるタンポポの4割は単一のクローンである
担当機関 (独)農業環境技術研究所
研究期間 2001~2005
研究担当者 井手 任
吉村泰幸
黒川俊二(畜産草地研)
芝池博幸
植竹朋子(東京大)
清水矩宏(畜産草地研)
大黒俊哉
楠本良延
矢野初美(東京大)
発行年度 2004
要約 環境省の「身近な生きもの調査(2001)」で収集された関東地方1都6県のタンポポのうち,42%を占める4倍体雑種性タンポポの94%は遺伝的に同一なクローンである。しかも,その単一クローンの分布域は,関東全域に及んでいる。
背景・ねらい 外来植物による遺伝的汚染が問題視される中,分子生物学的手法を活用した雑種識別法により,セイヨウタンポポと日本産タンポポの交雑による雑種個体の全国レベルの分布域を把握し,形態的にセイヨウタンポポと見なされる個体の約85%が雑種個体であることを示した(平成13年度成果情報)。関東地方1都6県に注目すると,タンポポ属植物のうち,形態的にセイヨウタンポポと見なされる個体が60%を占め、その71%は4倍体雑種であった。これら雑種性タンポポの分布拡大過程を解明するためには,特定の雑種個体の分布状況を把握することが有効と考え、雑種個体を遺伝的に識別し、それらの広がりを比較・解析した。
成果の内容・特徴
  1. 環境省の「身近な生きもの調査-タンポポ調べ(2001)」により全国から収集されたタンポポのうち,雑種性タンポポの構成比率が高い関東地方1都6県に分布する4倍体雑種個体(263個体)及び3倍体雑種個体(89個体)を対象として,3種類のマイクロサテライト・マーカーに見られる対立遺伝子を組み合わせることにより,クローン分析を実施した。
  2. その結果,4倍体雑種の94%に相当する246個体が遺伝的に同一な個体であり(表1),それらの分布が、関東平野全域に及んでいることが明らかとなった(図1)。4倍体雑種は,造成地等のオープンな場所に多く生育する傾向にあるが(山野ほか,2004),こうした環境に広く分布するタンポポは,遺伝的に全く同一な雑種性タンポポである可能性が示された。一方,3倍体雑種については,4倍体雑種に比べて遺伝的に多様なクローンが認められ,最も優占するクローンでも,26%に相当する23個体であった(表1)。
  3. 地区レベルのタンポポ集団においても4倍体雑種の単一クローンが優占する状況が見られるか否かを確認するために,畜産草地研究所(栃木県那須塩原市)構内の7箇所から収集したタンポポについて,日本産タンポポ,セイヨウタンポポ,3倍体雑種,4倍体雑種等を識別し,4倍体雑種について,同様のクローン分析を実施した。その結果,採集された4倍体雑種の80%が,関東地方に広がっているクローンと遺伝的に同一であることが明らかになった。以上のように,侵入後,約100年が経過したセイヨウタンポポについて,日本産タンポポとの交雑により生じた雑種(単為生殖による種子繁殖を行う)のうち,単一のクローンが広範囲に分布する実態を明らかにした。
成果の活用面・留意点
  1. 広範囲に分布する4倍体雑種のクローンの生育地特性が,両親種である日本産タンポポやセイヨウタンポポと異なっていることから,タンポポ属植物が,雑種化によって新たな生育地を獲得した可能性があり,外来植物の定着・拡散過程を解明する上で重要な手がかりとなる。
  2. 4倍体雑種の単一クローンが広範囲に分布するに至った過程を明らかにする必要があり,そのためには,当該クローンの生理・生態的特性や繁殖様式,ならびに全国での分布域や分布拡大速度を明らかにすることが不可欠である。
図表1 225416-1.png
図表2 225416-2.png
カテゴリ 繁殖性改善

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