突然死型乳頭糞線虫症の発症に係わる線虫の発育ステージの解明

タイトル 突然死型乳頭糞線虫症の発症に係わる線虫の発育ステージの解明
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1993~1995
研究担当者
発行年度 1995
要約 突然死型乳頭糞線虫症(子牛のポックリ病)は,小腸内に定着した乳頭糞線虫成虫に起因する心臓の可逆的機能異常により発症することが明らかになった。
背景・ねらい 乳頭糞線虫の濃厚感染により牛,羊は一連の不整脈,すなわち持続性頻脈,房室ブロックおよび心室性不整脈を順に示して突然死する(突然死型乳頭糞線虫症)。乳頭糞線虫は,経皮感染した幼虫が宿主体内を移行した後に,小腸内に定着して成熟するという複雑な発育様式をとる。本症を引き起こす線虫の発育ステージは不明であり,そのために発症機序の解析が困難なものになっている。また,発生した不整脈から回復可能であるか否かは,心臓に生じた異常が器質的なものか機能的なものかを判断するための重要な指標となる。これらの点を明らかにするために,乳頭糞線虫成虫の小腸内への移植による発症試験を行うとともに,発症動物への駆虫処置により不整脈が消失するかどうかを羊を用いて調べた。
成果の内容・特徴
  1. 羊の十二指腸内に乳頭糞線虫の成虫(図1)を外科的に移植して経過を解析した。その結果, 移植直後から持続性頻脈となり,ついで房室ブロックを示し,移植後2~9日目に心室細動に 陥り死亡した(図2,3)。成虫移植数が大きいほど死亡までの日数が短縮された。
  2. 羊の十二指腸内に成虫の乳剤を接種したが,一連の不整脈は発生せず生存耐過した(図3)。
  3. 羊に乳頭糞線虫を経皮感染させ,持続性頻脈となり房室ブロックが発生した時点(感染後11 ~13日目)に駆虫薬であるイベルメクチン製剤(1mg/kg)を皮下投与した。その結果,投薬後30時間から39時間までに頻脈および房室ブロックが消失した(図4)。投薬後3日以内に糞便内虫卵が消失し,心室性不整脈は発生せず動物は生存耐過した。非投薬対照例は一連の不整 脈を示して突然死した。
    以上のことから,本症は小腸内に定着した乳頭糞線虫の成虫により発症すること,破砕した成虫の成分では発症しないこと,本症にみられる心臓の異常は可逆的な機能異常であることが明らかになった。
成果の活用面・留意点
    発症に係わる発育ステージが成虫に限定されたことにより,今後の解析対象を腸粘膜に対する成虫の機械的刺激,および成虫が分泌する生理活性物質に絞ることが可能となった。また,本症の心機能異常が可逆的なものであったことから,心臓の自律および上位調節系の生理学的解析が必要である。
図表1 225594-1.jpg
図表2 225594-2.jpg
図表3 225594-3.jpg
図表4 225594-4.jpg
カテゴリ くり

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