子羊における羊ヘルペスウイルス-2の伝播様式

タイトル 子羊における羊ヘルペスウイルス-2の伝播様式
担当機関 家畜衛生試験場
研究期間 1998~1998
研究担当者
発行年度 1998
要約   羊型悪性カタル熱ウイルスの自然宿主(羊)での生態を解明するため,出生から約10ヶ月間にわたり羊ヘルペスウイルス-2の動態と抗体の変動を調べた。伝播経路は群内での水平感染の割合が高いことが示唆された。また,抗体産生はかなり遅く,遺伝子検出から2~8ヶ月遅延することがわかった。
要約(英語) The transmission of ovine herpesvirus-2 (OHV-2) in five sets of twin lambs was examined by competitive inhibition ELISA and PCR. Viral DNA was not detected in either the peripheral blood leukocytes nor the nasal swabs of the newborn lambs. Subsequently, all of them were infected by 5 months of age, but some lambs were infected 2 months later than the other half of the twins. This fact suggests that the natural infection in lambs may occur by horizontal infection rather than by vertical infection. All of the lambs seroconverted between 2 and 8 months after OHV-2 infection. (Lab. of Clinical Microbiology, Hokkaido Research Station, TEL +81-11-851-5226)
背景・ねらい  羊型悪性カタル熱の原因ウイルスは分離されていないが,発症動物由来株化細胞よりウイルス遺伝子の一部と考えられる塩基配列が単離され,羊ヘルペスウイルス-2(Ovine
Herpesvirus-2; OHV-2)と呼ばれている。このウイルスは羊に対する病原性はないが,牛や鹿などが感染すると悪性カタル熱を発症し致死的な経過をとることが多い。ほとんどの羊はOHV-2に感染しているが,その感染時期や伝播経路に関しては不明なことが多く,生後ごく初期に母羊から感染するという報告や生後2.5ヶ月頃に群から離せば感染しないという報告がある。そこで,羊群におけるOHV-2の伝播様式を調べるため,生後から約10ヶ月間にわたりウイルスの動態と抗体の変動を観察した。
成果の内容・特徴
      母羊5頭とその双子羊10頭から,血液・鼻スワブ・母羊の乳汁を定期的に採材し,PCR法によりOHV-2遺伝子を検出した。また,competitive
    inhibition ELISA により血清中の抗体を測定した。さらに,生後2.5ヶ月の離乳時点で,無作為に選んだ各双子の内1頭(No.2,
    4, 8, 9, 12)を群から隔離し,群内で飼育した他の5頭と比較した。

  1. 分娩前から産後3ヶ月までの観察期間中,OHV-2遺伝子は母羊の白血球から常に検出されたが,鼻スワブ・乳汁からの検出は不安定であった。


  2. 出生時の子羊からは,白血球・鼻スワブともOHV-2遺伝子は検出されなかった。その後,5ヶ月齢までに漸次白血球から検出されるようになり,全頭の感染が確認された(表1)。鼻スワブからの検出は白血球より頻度が低かったが,ほぼ同様の結果を示した。子羊の半数は離乳後に感染しており,中には感染時期が2ヶ月ほど差のある双子が認められ,群内での水平感染が示唆された。


  3. 生後2.5ヶ月からの隔離飼育は,感染を遮断できなかった。


  4. 移行抗体は1~5ヶ月齢の間に消失し,6~10ヶ月齢にかけて陽転した(表2)。移行抗体の有無と感染時期には相関がなく,また遺伝子検出から抗体陽転まで2~8ヶ月も要した。


成果の活用面・留意点

      羊群においてOHV-2は水平感染により伝播している可能性が示唆された。牛や鹿への感染対策のため,さらに詳しい検討が必要である。

図表1 225661-1.jpg
図表2 225661-2.jpg
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