フタル酸エステルが牛の卵巣顆粒層細胞および卵子に及ぼす影響

タイトル フタル酸エステルが牛の卵巣顆粒層細胞および卵子に及ぼす影響
担当機関 (独)農業技術研究機構 動物衛生研究所
研究期間 1999~2002
研究担当者 鈴木千恵
吉岡耕治
岩村祥吉
発行年度 2002
要約 フタル酸エステルはプラスチックに添加される可塑剤の一つである。この物質を高濃度で牛の培養卵巣顆粒層細胞に暴露すると、エストロジェン産生、エストロジェン合成酵素であるアロマターゼの活性、アロマターゼのmRNAの発現量および牛卵子の成熟率が低下した。
キーワード 牛、フタル酸エステル、卵巣顆粒層細胞、エストロジェン、アロマターゼ、卵子、成熟
背景・ねらい フタル酸エステルは、可塑剤(塩化ビニル樹脂を柔らかくする材料)の一つで、幅広く使用されているが、土壌や河川などの環境中や野生動物から高頻度に検出されており、内分泌かく乱物質として指定されている。ラットでは、50μM以上のフタル酸エステルを48時間暴露すると、生殖器官の細胞に毒性があることが確認されている。しかし、家畜では、この物質による生殖機能への影響に関する報告はほとんどみられない。そこで、フタル酸エステルの一つである、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)の代謝産物のフタル酸モノ-2-エチルヘキシル(MEHP)が、牛の卵巣顆粒層細胞および卵子におよぼす影響について検討した。
成果の内容・特徴 1.
24時間の高濃度(10μM以上)のMEHPの培地への添加は、牛卵巣顆粒層細胞のエストロジェン産生を抑制したが、低濃度の添加では影響は認められなかった(図1)。培養細胞のDNA量及びプロジェステロンの産生量に関しては、影響はなかった。
2.
エストロジェン産生に影響をおよぼす濃度のMEHPは、エストロジェンの合成に必要な酵素であるアロマターゼの活性を抑制した。
3.
アロマターゼの活性に影響をおよぼす濃度のMEHPは、アロマターゼのmRNAの発現量を低下させた(図2)。
4.
体外成熟培地中への高濃度(25μM以上)のMEHPの添加は、牛未成熟卵子の成熟を抑制した。
5.
通常の飼養環境で飼育している当研究室の試験牛の血清中には、MEHPは全ての牛において検出されなかった(表1)。
成果の活用面・留意点 1.
高濃度のMEHPは、牛卵巣顆粒層細胞および卵子に対して影響を及ぼすことが示されたが、いくつかの内分泌かく乱物質で報告されているような低濃度の暴露による影響は認められないことが明らかとなった。
2.
通常の飼養環境で飼育している牛の血清中にはMEHPは検出されなかったことから、MEHPの前駆物質であるDEHPの高濃度の汚染がない限り、生体での生殖機能に対する影響の可能性は低いと考えられた。
図表1 225752-1.gif
図表2 225752-2.gif
図表3 225752-3.gif
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