牛疫ウイルス感染牛からのウイルス排泄量の定量化

タイトル 牛疫ウイルス感染牛からのウイルス排泄量の定量化
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2005~2005
研究担当者 吉田和生
深井克彦
森岡一樹
播谷 亮
木村久美子
川嶌健司
大橋誠一
坂本研一 
発行年度 2006
要約  牛疫ウイルスFusan株を用いて牛に感染実験を行い、ウイルスの排泄量を調べるためにreal-time PCR法を構築し定量化した。ウイルス排泄は感染後66時間後から起こり、排泄量は鼻汁より糞便が20倍以上多いことが特徴である。
キーワード 牛疫ウイルス、診断、定量化、Real-time PCR
背景・ねらい  牛疫ウイルスは近年ではアフリカを中心に断続的な流行を繰り返しているのみであるが,本ウイルスは致死率が非常に高いこと,伝染力が強いことから18世紀にはヨーロッパにて牛2億頭、近年では1994~1995年にパキスタンで50万頭の被害を出したように一度発生すると被害が甚大である。東アジアにおいても1920年代には猛威をふるい、そのおりに現在の韓国で分離されたFusan株由来の弱毒株は現在の日本の備蓄ワクチンとして使用されている。一方、強毒株であるFusan株(218代牛で継代)は感染後のウイルスの排泄時期やその量に関しての知見がないため、黒毛和種牛の皮下に接種し、病原性を検証した。
成果の内容・特徴
  1. 接種牛は接種後66時間から体温が急に41℃以上に上昇し、96時間後に最高に達したと同時に膿様鼻汁が観察された。114時間後から下痢が始まり、120時間後には糞便に血液が混じり、その後体温が下降し始めた(図1、写真1)。
  2. 鼻汁(20%希釈液)および糞便(10%乳剤)を経時的に採集し、Forsyth,M.A. et alらの方法によってRT-PCRを行ったところ、写真2に示すように鼻汁および糞便とも60時間後から237bpの位置に特異的なバンドが検出され始め、鼻汁では72時間後、糞便では84時間後からバンドは明瞭となった。
  3. ウイルスの排泄量を測定するためのreal-time PCR(TaqMan PCR)のプライマーおよびプローブを構築した(図2)。
  4. Real-time PCRでも66時間後から鼻汁および糞便からウイルスの排泄が見られた。ウイルスのRNA量に換算すると鼻汁では114時間後で2.5ng(20%希釈液)と最高値を示し、その後徐々に減少するが、糞便ではさらに増加し120時間後で22.5ng(10%乳剤)と最高値を示した。また、鼻汁と糞便による排泄では糞便の方が20倍以上多いことが明らかとなった(図3、4)。
成果の活用面・留意点
  1. 40年前に保存された牛疫ウイルスFusan株は東アジアで分離された牛疫ウイルス強毒株として唯一のものである。今回牛で継代されたFusan株(219代)は強毒株としての病原性を保っており、今後の防疫を考慮する上での標準強毒株として充分有用である。
  2. 牛疫ウイルスに対するreal-time PCRは従来のRT-PCRと同等の感度を有しているが、特異性および定量性に関しては従来のRT-PCRより優れていることが期待され、牛疫の診断において非常に有用であることが考えられる。
  3. 牛疫ウイルス感染牛のウイルス排泄において、糞便による排泄が非常に多いことが明らかとなり、防疫上非常に有用な知見と考えられる。
図表1 225849-1.jpg
図表2 225849-2.jpg
図表3 225849-3.gif
図表4 225849-4.gif
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