タイトル |
豚繁殖・呼吸障害症候群発生に伴う経済的損失は2006年の場合約280億円 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2006~2008 |
研究担当者 |
加藤友子
幸野亮太(熊本県)
今田忠男
山川 睦
田中省吾
筒井俊之
白藤浩明
平田美樹(鹿児島県)
梁瀬 徹
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発行年度 |
2008 |
要約 |
豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)の発生に伴う経済的な損失の算出手法を開発し、その手法と疫学調査の結果に基づき推定した全国のPRRS発生養豚場における経済損失の合計は年間280億円である。
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キーワード |
豚繁殖・呼吸障害症候群、経済評価、疫学
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背景・ねらい |
豚繁殖・呼吸障害症候群(porcine reproductive and respiratory syndrome; 以下PRRS)は、1990年代初頭にわが国に侵入して以来、全国の養豚場にウイルスが拡がり生産者にとって非常に大きな問題となっているが、その被害を経済価値に換算して評価した報告はなかった。本研究は、PRRSが関与する繁殖・呼吸障害などの発生による経済的な損失の算出方法の開発を目指し、全国規模でのPRRSの発生による経済損失を推定することを目的とする。
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成果の内容・特徴 |
- 過去にPRRSの発生があった5農家の生産記録の変動や出荷価格等から、PRRS発生に伴う母豚1頭1日当たりの豚の事故類型別損失単価を算出した(図1、表1)。例えば、母豚500頭を飼育する農家で離乳豚にPRRSが100日間発生した場合、表1の事故類型別損失単価を用いると、56.9円×100日×500頭で合計2,845,000円の損失の算出が可能となる。
- 日本養豚開業獣医師協会の獣医師の立ち会いの上、養豚農家121戸を対象にしたアンケート調査を行った。対象農家のうち、2006~2008年度にPRRSの発生があった農家が80戸(66%)、非発生農家29戸(24%)、不明農家12戸(10%)であった。PRRS発生農家で認められる豚の被害は、離乳豚と肥育豚の事故率の上昇と流産が多く、発生期間の平均日数は556日と、長期に亘って持続的に発生している農家が多かった。
- PRRSの発生があった80農家の調査結果に、表1の事故類型別損失単価を用いて対象農家の経済損失を算出した。その数値を基に全国の飼養母豚数の比率から、全国規模でのPRRS発生に伴う経済損失を2006年の統計数値を用いた場合、約280億円と推定した(図2、表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- PRRSの発生に伴う経済的な損失を簡便に算出する手法を開発した。これらの数値を農家に示すことにより、予防や対策に対する意識を高めることが可能となる。
- PRRSが関与する繁殖・呼吸障害は、全国の養豚場において極めて大きな損失をもたらしている。今後、関係機関が協力して、PRRSの予防対策を強化していく必要がある。
- 今回、養豚農家におけるPRRSの発生による全国規模での損失額の推定を行った。養豚農家では、PRRS以外にも下痢など多くの問題が発生しているが、その経済的な被害については不明な点が多い。これら疾病についても今後、今回行った経済損失算出方法を応用して損失額を推定し、家畜衛生対策の優先順位の決定に役立てることが期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
飼育技術
出荷調整
繁殖性改善
豚
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