口蹄疫ウイルスO/JPN/2000株にはマウスに対する病原性の異なるウイルスが混在する

タイトル 口蹄疫ウイルスO/JPN/2000株にはマウスに対する病原性の異なるウイルスが混在する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2007~2009
研究担当者 吉田和生
坂本研一
森岡一樹
深井克彦
大橋誠一
発行年度 2008
要約  2000年に日本で分離された口蹄疫ウイルスO/JPN/2000株には培養細胞において著しく小さいプラックを形成するウイルスが存在する。このタイプのウイルスは乳飲みマウスに対する病原性が極めて低い。
キーワード 口蹄疫、病原性、乳飲みマウス
背景・ねらい  2000年に日本では92年ぶりとなる口蹄疫の発生がみられ、O/JPN/2000株が分離された。本株は動物実験において、黒毛和牛に対して、従来の典型的な症状を示さず、ホルスタイン種、山羊および緬羊に対しては、ほとんど感受性を示さない。また、口蹄疫ウイルスを分離する手段として、培養細胞と同様に掲げられている乳飲みマウスに対して、本株は致死性を示したものの、他の口蹄疫ウイルスに比べて、病原性はそれほど強いものではない。本研究では、本株の中に、著しく大きさの異なるプラックを形成するウイルスが存在することに着目し、乳飲みマウスおよび乳飲みマウスに由来した培養細胞を用いて、本ウイルスの増殖性および病原性について探る。
成果の内容・特徴
  1. 本株の分離直後において、およそ4:6の割合で存在している小型プラックウイルス(SPV)および大型プラックウイルス(LPV)のクローニングを行った(図1)。また両ウイルスの培養細胞下の液相における増殖に関してはウイルス力価の面では明瞭な差はみられない。
  2. 両ウイルスの構造蛋白質コード領域における遺伝子解析の結果、アミノ酸の相異が2箇所で確認され、口蹄疫ウイルスのヘパリン硫酸結合能に関連するVP3の56番目のアミノ酸に相異がみられる(表1)。
  3. 乳飲みマウスに両ウイルスを接種すると、図2に示すとおり、LPVのみが明らかな病原性を示す、またSPVにおいてはウイルス接種後の生存マウスの抗体の上昇もみられない。
  4. 口蹄疫ウイルスの乳飲みマウスにおける主要増殖部位である骨格筋細胞の初代培養細胞(SMSK)を用いて、両ウイルスの増殖性とウイルス被接種SMSK中の1型インターフェロン(IFN)のmRNA発現についてTaq-Man® probe法を用いて調べた結果、LPVはウイルス増殖および1型IFNのmRNA発現がみられるが、SPVは双方の試験共に明らかな反応を示さない(図3および図4)。従って3の結果も含め、SPVは乳飲みマウスに対して極めて感受性が低いことが示唆される。
成果の活用面・留意点
  1. 口蹄疫診断の際のウイルス分離法を考える上での参考知見になり得る。
  2. これらの低病原性口蹄疫ウイルスの研究は、口蹄疫発生時の病原性診断技術への応用が期待される。
  3. 野外感受性動物である偶蹄目家畜に対する病原性について検討する必要がある。
図表1 225905-1.jpg
図表2 225905-2.gif
図表3 225905-3.gif
図表4 225905-4.gif
図表5 225905-5.gif
カテゴリ 診断技術 肉牛 山羊

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